子を産まない働きアリは
なぜ進化できたのか
さて、ダーウィンはアリの社会を見て、なぜ困ったのでしょうか?ダーウィンは不妊の働きアリが見せる女王アリへの忠誠を問題視しました。この性質の進化を、ダーウィンはどうしても説明できなかったのです。
女王への忠誠心が高く、とても有能で、働き者の働きアリがいたとしましょう(実際に働きアリはこの通りです)。しかし、働きアリは子を産まないわけですから、この個体のもつ性質は、遺伝により次世代に伝わりようがありません。
つまり、アリの社会性など進化しようがないのです。ところが、実際には多くの昆虫で、見事な社会性が存在します。ダーウィンは、これを自説の反証だと考え、なんとか説明を試みましたが、うまくいきませんでした。「ダーウィン敗れたり!」なのでしょうか。
苦し紛れに採用された説明は、女王アリによる操作です。これは、「女王アリがフェロモンで働きアリを支配している」という、女王アリ本位の考え方です。
当たり前ですが、女王アリにとっては、働きアリがいたほうが子育てがしやすく、多くの子を残せます。「働きアリが女王アリに尽くす形質が、女王アリを通じて選択された」と、女王アリに都合よく考えることができます。
「女王に支配されている」
だけでは説明できない
一見よくできたこの考えも、大きな穴があります。女王アリは子を残せますが、働きアリは自らの子を全く残せない点です。
ドーキンスによれば、生物は自分の遺伝子を増殖するだけの存在です。子が残せないということは、自分の遺伝子を全く増殖できないことを意味します。にもかかわらず、働きアリは従順に女王アリに尽くしているのです。明らかにドーキンス理論に矛盾しています。「ドーキンス敗れたり!」なのでしょうか。
「そんな難しく考えなくても。どうせフェロモンに支配されているだけでしょう?」、と考えた読者もいることでしょう。確かにその通りですが、それだけが理由ならば、働きアリが反乱を起こす可能性を否定できません。







