外為特会の収益は安定したものか?
日米金利差などで大きく左右される
外為特会の利益は、日米の金利差によって大きく左右される。日本の金利が上昇すれば円資金の調達費用が増え、米国の金利が低下すれば外貨資産の運用収益が減少する可能性がある。
したがって、現在多額の利益が生じているからといって、将来も同じ利益が続くとは限らない。減税が2年間の時限措置であっても、その期間に必要な財源を確実に確保できるかどうかは、検討しなければならない。
また外為特会から一般会計への繰り入れは、必ずしも内部留保や外貨資産を売却して得た円資金によって行われるわけではない。政府短期証券を発行して円資金を調達する仕組みもある。
この場合には、一般会計の収入は増えても、外為特会側の円建て負債が増える可能性がある。一般会計の赤字国債発行を抑制できたとしても、それだけで政府全体の債務負担が軽減されたとは言えないのだ。
もっとも、外為特会には外貨資産とその運用収益が存在する。政府短期証券の発行額だけを取り上げて財政状態が悪化したと判断することも適切ではない。政府全体の資産、負債、収益、費用を合わせて評価する必要がある。
税の自然増収の議論でもそうだが、財源が存在することと、新たに利用できる財源が存在することは違う。消費税減税の財源論では、まずこの基本的な区別を明確にすることが必要だ。
「政府純資産」の減少という意味で同じ
重要なのは政府全体の財政バランス
結局のところ、外為特会の活用で、一般会計の赤字国債発行を抑制できたとしても、外為会計の内部留保や外貨資産が減ったり、政府全体の投資と貯蓄、資産と負債のバランスが悪化したりする場合があるのだ。
つまり、赤字国債を増発して消費税減税の財源を確保することと、外為特会から一般会計への繰入金を増額して減税財源を確保することは、基本的に同じだ。前者は国の債務を増加させるし、後者は、外為特会に積み立てるはずだった資産を減少させる。
いずれの場合も、政府全体の純資産を減らす点では同じであり、資産・負債のバランスを悪化させる可能性がある。
「赤字国債は問題が多い」ということが一般常識化しているため、「赤字国債増発が回避できればそれでよい」との錯覚に陥りがちだ。しかし、問題とすべきは、赤字国債だけでなく、政府全体の財政のバランスなのだ。
したがって、「赤字国債を発行しないから財政の健全性は損なわれない」という説明は成り立たないことに注意しなければならない。
(一橋大学名誉教授 野口悠紀雄)







