味方を騙して裏切り者をあぶりだす

 情報を厳重に管理していても、漏洩を完全に防ぐことは難しい。では、ドラマのように内部から情報が漏れている疑いがある場合、現実ではどう対処するのか。

 情報の裏を確認し、別の情報とすり合わせるなど、その精査にはさまざまな方法があるが、その手法の一つが、「アドバルーン(観測気球)」と呼ばれる方法だ。

「情報漏洩が疑われる場合、あえて『偽の情報』を流して反応を見ます。例えば、ある事件の捜査本部で情報が漏れているとします。その際、A班には『凶器は果物ナイフ』、B班には『柳刃包丁』、C班には『カッター』と、それぞれ異なる偽情報を流すのです」

 もしその後、メディアや対象者の口から「凶器は柳刃包丁らしい」という情報が出れば、B班から情報が漏れている可能性が高くなる。あえて異なる情報を伝えることで、漏洩元を絞り込むわけだ。情報を守るために、味方にもすべてを明かさない。それも情報管理の重要な手法なのだ。

 こうした現実の情報戦を知ると、『VIVANT2』の見方も変わってくる。登場人物の言葉や行動を、単に敵か味方かという視点で見るだけでは、真意を読み違えるかもしれない。

 誰が誰に情報を伝え、何を伏せているのか。相手の反応を確かめるために、あえて情報を流している可能性はないか。こうした視点を持てば、何げない会話や情報の食い違いにも、新たな面白さが見えてくるはずだ。

本郷矢吹/作家/1967年東京生まれ。某県警に拝命後、警察本部で外事課に籍を置き、韓国語の能力を活かして朝鮮半島を中心とした周辺国の情報を担当。国内外の情報機関の担当者と交流を持ち、警察庁では危機管理を担当。著書に『日本の長い一日』『防衛のインテリジェンス』(いずれもART NEXT)。
勝丸円覚/作家、セキュリティコンサルタント/1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてからは、一貫して公安部外事警察に勤務。在職中の数年間、アフリカ某国の日本大使館にも勤務。退職後の現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活動。TBS系ドラマ『VIVANT』では公安監修を担当。著書に『諜・無法地帯 暗躍するスパイたち』(実業之日本社)、『警視庁公安捜査官 スパイハンターの知られざるリアル』(幻冬舎新書)、『公安外事警察の正体』(中央公論新社)、『スパイは日本の「何を」狙っているのか』(青春新書インテリジェンス)など多数。