誰もが自然に「情報サービス」にアクセスする社会
リサーチ部門
バイス
プレジデント 兼
最上級アナリスト
今から述べる話はフィクションである。時は2023年。
セリア・ヤングは中規模の物流会社トランツコのCOO(最高執行責任者)。我々と同様に彼女は消費者であり、家族がおり、私生活がある。職場では、営業から、調達、配送といった重要な業務プロセスと事業全体を支える間接業務、そしてすべての業務運営に責任を持っている。
2023年現在、彼女は、世界中の生活にくまなく普及している「情報サービス」の平均的なユーザーである。彼女の叔父は「ITに精通した人々」のことを語る上で、「デジタル・ネイティブ(デジタル世代の人々)とデジタル・イミグラント(デジタル機器の操作が不慣れな人々)との対比」が議論されていた時代をいまだに懐かしむことがあるが、セリアの周囲の世間ではもはや話題にすら上らない。
「情報サービス」は至る所にあり当たり前のものだ。特別なスキルは何も必要なく、若者も年寄りも自然に直観的に使いこなしている。この10年でいつの間にかそうなったようだ。「情報サービス」にアクセスできる消費者向けの機器やサービスはより進化し、容易に扱い、実際に役立てたり楽しんだりしている。
もちろん今も、テクノロジーにこだわる人は存在する。デザイナーやユーザビリティ・エンジニア、そして実際にデバイス、インフラ、サービスを開発する人たちだ。この産業は変わらずに重要である。しかし、多くの人には、日常生活やビジネスでツールを使うことの方が重要なのだ。
彼女の家族や友人と同じく、セリアも自宅で、路上で、公共交通機関の中で、買い物中であれ外出中であれ、あるいは仕事中であろうと、あらゆることに「情報サービス」の資源を何気なく利用している。プライベートであれ仕事であれ、彼女が必要とする情報が「すでにあり」、情報にアクセスするためのデバイスもどこにでもある。
彼女に必要なツールは(以前は「アプリ」と呼ばれていた)、デバイスの中にあるものなのか、またはデバイスを使ってアクセスしているのか、彼女は知らないし、知る必要もない。必要なサービスや機能を呼び出すと、あとは勝手に動いてくれる。彼女の操作、表情や声を認識するデバイスに向かって身振りや言葉による指示を与えることによって、利用できる情報、アプリケーション、ツール、通信サービスがいつでもその場に現れる。これは、彼女や彼女の家族にとって当たり前のことだ。