年収では埋められない
職場の4つの資源
前述した達成感や成長実感は、本人の気の持ちようだけで得られるものではありません。
仕事に熱意と活力を持って没頭している状態をワークエンゲージメントといい、これが低いと離職や心の不調を招きやすくなります。これを支えるのが、職場にある仕事の資源です。
年収が高くても、この資源が乏しい会社には入ってはいけない、というのが私の考えです。資源は大きく4つあります。
1つ目は、同僚との信頼関係と助け合いです。忙しい人に同僚が自然な形でフォローに入り、悩みを気軽に話せて、チームで目標を達成しようとする職場かどうか。忙しくて業務が回っていない人がいても誰も助けな
い。ちょっとした相談を気軽にできる相手もいない職場は要注意です。
2つ目は、上司の支援です。日頃から声をかけてくれるか、目標設定にきちんと向き合ってくれるかなどを見ます。ミスを頭ごなしに責めるだけで、次にどうするかを一緒に考えてくれない上司のもとでは力を伸ばすのは難しいでしょう。
3つ目は、仕事の手応えを得られる仕組みです。同じ営業職でも、見積もり作成だけを任されるのか、アフターフォローまで任されるのかでできる経験は変わります。また、自分のしたことにすぐフィードバックがもらえ、優先順位をある程度自分で決める裁量があり、やり方や進め方を工夫できる余地があれば、やりがいは大きくなります。
4つ目は、会社の支援と公正な評価です。昇進や昇給の基準が明確で、ひいきなく運用されているか、制度を変えるときに社員の声を聞き、丁寧に説明しているかを確かめます。
私が就職や転職を考える人に、この4つの情報を集めるよう助言しているのは、年収や年間休日の多さだけでは働き続ける理由にならないからです。
どうせ3年で辞めるから
職場の居心地は関係ない?
長く勤めるつもりはない、スキルを身につけたら次に行くのだから「4つの資源」など関係ない、と考える人もいるでしょう。市場価値を高めるために転職するという考え方自体は、あってよいと思います。ただ、実は短期間で成長したい人にとってこそ、上司や同僚の支援は欠かせません。
転職者は、新しい会社で成果を出す過程で成長します。成果を出すには周囲の協力が必要ですが、入社直後は「この人は仕事ができるのか」と試されるような目で見られ、成果を示すまで十分な協力を得られないことがあります。周囲は成果を出した人を信頼して助けようとするからです。成果を出すために支援が必要なのに、成果を出すまで支援が得られない。これが、転職者が抱える「中途のジレンマ」です※2。
助け合う文化がなく上司の支援も得られない職場では、この悪循環から抜け出しにくく、3年で実力をつけて次へ行くという計画そのものが頓挫しがちです。職場の資源は長く勤めるためだけのものではなく、成果を出して市場価値を高めるため、成長するための資源でもあるのです。在籍期間が長かろうと短かろうと、4つの資源は確かめておくべきです。
内定承諾前に
配属先の社員と話す機会をつくる
こうした情報は、会社のホームページを見たり、AIで調べたりしても、まず出てきません。
そこで、私が勧めているのは、配属予定先の社員との面談を自分から依頼することです。転職がうまい人は、実際にそうしています。選考がある程度進んでいれば、応募者にも交渉の余地があります。「配属予定の部署の方と、オンラインで構わないので30分だけでもお話しできませんか」と持ちかけてみてください。制度は人事に、仕事の実態は現場に聞くのが鉄則です。
もちろん漠然と「雰囲気はいいですか」と聞いても、実態は見えません。「仕事でつまずいたとき、上司や同僚はどう対応してくれましたか」「成果へのフィードバックは、誰からどのようにもらっていますか」と尋ねれば、職場のサポートや手応えがどの程度あるのかが見えてきます。社員が1000人いれば働き方も1000通りですから、できれば1人だけでなく、複数の社員に聞けるとよいと思います。
内定承諾の前に確かめるべきなのは、いくら給与がもらえるか、制度が整っているかといった条件のよさだけではありません。自分が力を発揮できる環境かどうかなのです。
※2 「自分で希望したのに…」転職・異動で“内定ブルー”になるのはなぜ?(2025年5月29日 ダイヤモンド・オンライン)








