政府の財政健全化目標と
消費税率引き上げ
日本の公的債務残高は対GDP比で200%をはるかに超えている。世界の主要国のなかでは突出した水準である。万が一にも日本の財政運営について市場に懸念をもたれれば、国債価格は暴落(国債金利は急騰)してしまい、大変なことになる。
そこで、財政健全化についての政府の姿勢が問われることになる。膨大な額に積み上がった公的債務は、とても短期間で解消できるものではない。長い時間をかけて縮小させていく必要がある。そのための財政健全化を実行する意思と能力が政府にあるのか、市場は見極めようとしているのだ。
日本政府が提示した財政健全化の目標は大きく二つあると言ってよいだろう。一つは、2015年までにプライマリーバランス(国債発行に伴う収支を除いた、国の基礎的財政収支)の対GDP比財政赤字を、2010年比で半減するという目標だ。先日発表された政府の中期財政計画の数字で言えば、国の財政赤字をこれから2年のあいだに8兆円程度削減しようというものである。
もう一つは、より長期の財政健全化目標である。政府は、2020年までにプライマリーバランスで見た財政収支の黒字化を目標としている。そしてそれ以降、対GDP比で見た公的債務の規模を縮小していくことを目指している。
この二つの目標を実現するためには、消費税が重要なカギを握る。2015年までに財政赤字を半減させるためには、(1)消費税率を予定どおり10%まで引き上げる、(2)デフレ脱却で税収が拡大する、(3)歳出が増えないように抑制する、この三つが鍵となる。
特に注目されるのは消費税率の引き上げである。今秋には安倍総理が、予定どおりに引き上げるかどうかを決断する。かりに消費税率の引き上げを先送りするとか、あるいは小刻みな引き上げに転ずるというようなことになれば、2015年までの財政健全化の道筋が見えにくくなってくる。
当面は、2015年までの財政健全化に注目が集まるだろう。ただ、首尾よく2015年までの健全化目標を達成したとしても、その先にもう一つ大きな目標が控えている。2020年までにプライマリーバランスを黒字化するという目標である。