旅が与えてくれた、出会い 

 道中で出会う、様々な人と言葉を交わし、興味深く彼らの話を聞くエルネスト。

 チリの銅山では、さすらう疲れきった夫婦と出会います。聞けば、彼らは共産主義者ゆえ、土地を取り上げられ、仕事を求め放浪を余儀なくされていると。「あなた達は、何のために旅をしているの?」。そう問われて、言葉につまるエルネスト。「…旅をするためです」「そう、幸運を祈るわ」。親しくなった彼らが、銅山の採掘所で、労働力として虫けらのように扱われる様子を見て、エルネストの胸に、何かがくすぶり始めます。

 アンデスを進み、たどり着いた古都クスコでは、いにしえのインカ帝国の文化や、心優しい先住民との触れ合いを経験します。心を開いて彼らの話に耳を傾けると、またしても、占領者である地主に搾取されたり、買収された警察の横暴で土地や仕事を奪い取られたという話が続きます。

 天空の都市遺跡、マチュピチュの姿に目を奪われた日、エルネストは思いを馳せます。このように素晴らしい文明は、一体、どこに消えてしまったのだろう。そして、なぜ、この国々が今、全く違う文化に覆い尽くされようとしているのだろう……。

マチュピチュ
Creative commons.Some rights reserved.Photo by kudumomo

 沢山の出会いを通して、エルネストの中には、南米大陸という地、文明への畏敬、そこに住む人々への愛、そして支配や搾取、貧困という不条理への憤りという火が静かに燃え始めていました。

出会いがもたらす、気付き

 エルネストは、この旅でまた1つ重要な出会いを呼び寄せます。リマにて訪ねた、ハンセン病の権威、ペッシェ博士を起点とする出会いです。

 故郷ブエノスアイレスの医大で、エルネストはハンセン病について学んでおり、旅に出る前に、ペッシェ博士に訪問を願い出るという、積極的な行動をとります。

 その結果、博士は2人を歓迎し、食べ物、着るもの、寝る所の他に、重要なものを与えてくれました。それは、思想です。「君達のように、高い理想と疑念を抱いている若者に、必要なものだよ」と、博士が渡してくれたのは、20世紀ペルーの政治思想家、「ラテン・アメリカ最初のマルクス主義者」と称されるマリアテギの本でした。「先住民の復権なくして、社会主義の実現はない。先住民達は、少数だからこそ、団結しなければならない」という思想との出会いが、この後、エルネストの人生に大きな方向性を与えていきます。

 そして、もう1つの出会いは、博士の紹介で経験することとなる、ハンセン病の隔離施設でのボランティア生活でした。患者たちは、故郷や家族と引き離され、アマゾンの川沿いの地でひっそりと暮らしています。しかし、そこには、現実を受け入れ、穏やかに慎ましやかに暮らす人々、そして彼らを支える医師や看護士たちの、静かで温かなコミュニティがありました。