11月8日から、政府税制調査会のディスカッションググループ(DG)で、法律により2016年より導入される「番号(マイナンバー)」をどのように活用するかという議論が始まった。カギとなるのは、資産所得の情報に番号を付けて国家が入手し、それをわが国の社会保障効率化に役立てるようにすることだ。

現役世代の活力を維持しながら豊かな高齢社会を建設するためには、高齢者に負担増を求めざるをえないが、「高所得高齢者」だけでなく、資産を多く保有する「富裕高齢者」への負担増も必要になる。

負担増は「高所得高齢者」より
「富裕高齢者」に

 社会保障国民会議は、給付面における世代間の公平という考え方のもとで、全世代型社会保障への転換を打ち出した。象徴的なのは、医療・介護分野における「高所得高齢者」への負担増を求めたことである。

 報告書の内容は、プログラム法として立法化され、今後はそのスケジュールに従って具体的な改革に向けて動き出す。不十分な面は多々あるものの、社会保障改革が具体的に動き出したことは歓迎したい。

 中でも注目されるのは、高所得者への負担増で、例えば介護サービスの自己負担(現在1割)については引き上げ方針が明記されている。具体的には、夫婦世帯で年収が三百数十万円以上の者の介護保険について、現行の1割負担から2割負担に引き上げる方針のようである(朝日新聞8月26日付)。

 医療保険についても、保険料、高額医療費などについて、さまざまな所得制限がつけられている。

 しかし、負担増を「高所得高齢者」だけに求めるのでは、十分とはいえない。なぜなら、高齢者の中には、フローの所得は現役を退いていて低いが、勤労時代に貯蓄した高額のストック、資産を持っているという場合が少なからずあり、その者を低所得者として社会給付の対象にするのは、制度のありかたとして非効率である。