半導体事業の大幅な再編を進めている富士通。2013年度上半期の半導体事業は益転したものの、2月に発表した再編計画の実現は大幅遅れ。携帯電話事業の赤字という次なる課題が立ちはだかる。富士通はどこに向かうのか。(「週刊ダイヤモンド」編集部 大矢博之)
半導体は手放さなくてもいいんじゃないか──。半導体事業の大幅な再編を進めている富士通で、最近こんな軽口がたたかれるようになったという。お荷物だった半導体事業が、2013年度上半期に黒字に転じたのだ。
ちょうど1年前の昨年11月。富士通本社は悲愴感に包まれていた。岩手工場や後工程3工場の売却が決まっていたが、半導体事業の出血は止まらない。12年度の営業損失は100億円超の見込みだった。
事業統合の“花婿候補”だったルネサスエレクトロニクスは、産業革新機構による支援がほぼ確実。富士通としての道筋を示す必要に迫られた山本正已社長は、12年度中に収益改善策をまとめて公表するよう指示し、腹をくくった。
「半導体工場のさらなる減損と、人員削減に手をつけざるを得ない」
半導体工場の減損240億円を含む1700億円の特別損失の計上。システムLSI事業はパナソニックと事業統合し、三重工場は台湾TSMCと設立した新会社に移管。全社の業績は4年ぶりの最終赤字──。構造改革案を発表した2月の会見で、山本社長は「再編は苦渋の決断だ。早期に遂行し、来期以降の利益改善に直結させたい」と唇をかんだ。
さらに、富士通は再編の二の矢を放つ。1963人が応じた早期退職者の募集に続き、マイコン・アナログ事業は米スパンションに約148億円で売却することを決定。この1年で半導体事業からの転籍が決まった人員は約1万人に上る(図参照)。