今回から4回にわたり、「イノベーションを起こせる組織」というテーマで論考を進めてみたい。連載の第1回に当たる今回は「イノベーションにまつわる誤解」を、第2回、3回では「イノベーションが起きやすい組織の特徴」を、最終回となる第4回では「イノベーションを起こせる組織をいかに作り上げるか」という点について述べたいと思う。
誤解1:日本人は
イノベーションに不向きだ
組織論・人材論の観点からイノベーションを考察した場合、大きく二つの誤解が常に付きまとっている。一つが「日本人はイノベーションに不向きだ」というものだ。しかし、これは大きな間違いである。日本人の創造性は、世界的に見て劣後しているどころか、むしろトップレベルにあると言っていい。
自然科学三分野におけるノーベル賞の受賞数
例えば、自然科学三分野(物理学、化学、生物・医学)におけるノーベル賞の受賞数を見てみると、戦後から現在までの期間で、日本は米国、英国、ドイツに次いで4位の位置にある。さらにこれを2001年以降、つまり21世紀に限ってみると、日本は米国に次いで2位の位置にあることをご存知だろうか。
史上最高のメダル獲得数に日本中が沸いたロンドンオリンピックだが、その金メダル獲得数の順位が11位であったことを考えれば、この受賞数が如何にすごいことかおわかりいただけるだろう。ちなみに、人口で日本の10倍以上を数える中国、インドからはこの分野でのノーベル賞受賞者は出ておらず、端的に言って日本の「足元にも及んでいない」状況である。
高レベルの映画、文学とアニメの破壊力
では、自然科学分野を離れて芸術文化の領域についてはどうだろうか?この分野においても日本人の創造性は「突出している」と評価できる。例えば商業と芸術の交差点に位置する映画の分野では、最も栄誉あると考えられているヴェネチア国際映画祭の50周年記念際において、黒澤明監督の「羅生門」が、過去のグランプリ作品中の最高作品、つまりグランプリ・オブ・グランプリに選ばれている。