年内妥結を目指す環太平洋経済連携協定(TPP)交渉の雲行きが、日米間の激しい対立によって怪しくなっている。
日本市場でシェアを拡大したいアメリカは、妥協して年内妥結するよりも、できるだけ自国に有利な合意を引き出そうとしているとも伝えられる。
アメリカが求めるのは輸入品全品目の関税撤廃だが、日本はコメ・麦、砂糖などの農産品5項目の関税維持を要求。これが死守できなければ、政権を揺るがす事態も考えられるため、さすがの日本政府も一歩も譲らない構えだ。
そこで、農業や自動車産業を守る代わりに、バーターとして差し出される可能性があるのが医療分野だ。
2011~2013年で変化した
USTRの対日要求
前回の本コラムで、TPPが発効されても「混合診療の全面解禁」「株式会社による病院経営への参入」が実現する可能性は極めて低いことをお伝えした。
だからといって、アメリカが日本の医療分野での市場開放要求を諦めたわけではない。とくに輸出拡大による雇用創出と経済成長を目標にするオバマ政権下ではその圧力が強まっている。
だが、日本で混合診療の全面解禁を行うには法改正が必要だ。経済的にも政治的にも困難が伴うため、日本政府もそう簡単に首を縦にはふらない。そこで、手間のかかる混合診療の全面解禁はとりあえず棚上げにして、てっとり早く自国産業の利益を確保できる要求へと軸足をずらしたのだ。
では、アメリカの要求はどのように変わったのか。