家族団らんの雰囲気が楽しいWii「シアターの間」。これまでのビデオ・オン・デマンドの課題を克服し、お茶の間の住人の心を掴むことができるか? (c)2009 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved |
自宅にいながらにして好きな映画をレンタルできる「ビデオ・オン・デマンド」。返却の手間もなく、もちろん延滞金も発生しない便利なサービスだが、爆発的な普及には至っていないのも事実である。
筆者も数年前に利用した経験があるが、「コストが高い」「配信作品が少ない」「映像が乱れがち」といった理由で、解約した記憶がある。結局、近所の大型店で時折開催される「100円レンタル」に足を運んでいるのが実状だ。
しかしそうはいっても、ビデオ・オン・デマンドの手軽さは魅力である。前述の問題点が改善されているなら、もう一度利用してみたい。
そう考えていた矢先、気になる2つのサービスがほぼ同時にスタートした。任天堂wii「シアターの間」と、プレイステーション「PlayStation Store」での映画配信である。
いずれも据え置き型の家庭用ゲーム機をプラットフォームとしている点が特徴で、従来のビデオ・オン・デマンドのようにセットトップボックスなどの専用機器を用いる必要がない。そこで早速両者を比較検討してみた。
まずはWii「シアターの間」。こちらは2009年5月から始まった動画配信サービス「Wiiの間」に新たに登場したコンテンツである。あらかじめ「Wiiポイント」を購入した上で「シアターの間」に入り、好きな作品をレンタルする仕組みだ。
もちろん、視聴期間中であれば何度でも愉しめる。作品は「映画」「アニメ」「なつかし映像」「お役立ち映像」という具合に分類され、安いものは30ポイント(=30円)から視聴可能だ。
また、作品によっては「ニンテンドーDSi」に転送することもできる。全体の傾向としては、ファミリー層に強いWiiだけに「ポケットモンスター」「星のカービィ」といった子供向けアニメや教育番組が多い。“家族そろって楽しめる”動画を中心に展開していると言えそうだ。
一方、ハリウッド映画をメインとしたラインナップで勝負をかけるのが、プレイステーション。若者向けアニメの配信は以前から行なっているが、12月から「映画」「ドラマ」コンテンツを追加。「ハリー・ポッター」シリーズや「バットマン」「ターミネーター」などの人気映画を揃えている。
作品によってセル方式とレンタル方式とに分かれており、たとえば「ハリー・ポッターと賢者の石」であれば1200円で購入、あるいは350円でレンタルすることができる。
Wiiにせよプレステにせよ、従来のオンデマンドサービスと比べると、敷居は随分と低くなっている感がある。ゲーム機本体を購入済みでネット環境さえあれば、面倒な手続きなしにすぐに利用できるのは嬉しい。
とりわけ「シアターの間」の低価格は魅力的だ。一方、携帯型ゲーム機のPSPからも直接ダウンロードすることができる「PlayStation Store」のコンテンツも捨てがたい。
ただし、現状ではどちらも作品数がまだ十分とはいえず、継続して利用されるかは怪しいところだ。「テレビ」という無料コンテンツに慣れ切った“お茶の間の住人”の目は、けっこうシビアなのである。
(中島 駆)