昨年、数本の中国映画を見て、大きく感動し、いろいろと考えさせられもした。もちろん、ただランダムに見た映画ではなく、事前にいろいろな評判を読んでずっと前から見たいと思っていた映画ばかりだった。その意味では、映画を見た後、満足感が湧くのは当たり前と言えば当たり前のことかもしれない。しかし、この満足感が期待していたものを大きく上回ったし、映画と中国経済との関係まで考えさせられたこともあり、映画と中国経済という視点で取り上げたくなったのだ。

感動した3つの映画

 これらの映画は薛暁路(シュエ・シャオルー)監督の『海洋天堂』(監督・脚本)と2013年大ヒットを記録した『北京ロマンinシアトル(北京遇上西雅図)』(監督・脚本)、中国の若者の創業物語を描いた『アメリカン・ドリーム・イン・チャイナ(中国合夥人)』(陳可辛(ピーター・チャン)監督)だ。

 映画のあらすじを紹介しておこう。

 『海洋天堂』は自閉症の子どもを正面から取り上げた映画だ。李連杰(ジェット・リー)が演じる父親王心誠は、泳ぐことが大好きな自閉症の息子と支えあって暮らしていたが、末期がんと宣告される。 息子の将来を心配した父は生きる術を息子に必死に教えようとする。そして父親が亡くなったあと、必死にしかし無邪気に生きていく息子。

 父親の死の直前に打ち明けられた、水泳が得意な母親の海での溺死の真実にも、テーマの重さを感じざるを得なかった。ジェット・リーは中国改革・開放時代の初期に放映された映画『少林寺』の主演で一躍して有名になって以来、ずっと国民的に注目されている存在だ。近年、社会福祉に大きく関心をもつジェット・リーが主演する父と子の絆を描いたこの映画は、心に響く感動作である。

 『北京ロマンinシアトル』は真実の愛に気づかせてくれるハートフル・ラブストーリーと評価されている。湯唯(タン・ウエイ)が演じる若くて美しい女性文佳佳は出産のため単身シアトルへ。強気で傍若無人に振舞う彼女だが実は大きな孤独を抱えていた。在米中国人運転手のフランクはそんな彼女を静かに支え、二人は次第に惹かれ合っていく。出産を終え彼女は、ついに運転手のフランクと結婚するという決断をした。