富士重工業が快進撃を繰り広げている。為替が好転する前にどの自動車メーカーよりも先駆けて復活できたのはなぜなのか。米国市場での一本足打法やトヨタ自動車との提携関係の“微妙さ”など、中長期的な課題にどう立ち向かうのか。吉永社長に真意を聞いた。

――米国販売が業績をけん引し、2014年3月期には過去最高の営業利益2780億円、営業利益率12%に達する見込みです(中期経営計画の目標値は16年3月期に営業利益1200億円、営業利益率6%)。富士重工業が、これまで経験したことのない“新天地”へ踏み出すことに不安はありませんか。

富士重工業社長 吉永泰之 <br />次期中期経営計画の核心は<br />100万台拡販ではないPhoto by Kazutoshi Sumitomo

 ないですね。浮ついたことをやって、偶然このような結果になったわけじゃありませんから。社長に就任してから社内に、「規模の小さな会社なんだから、欠点の議論ばかりしていたって元気がなくなるだけ。スバルは強みに集中して、強みを伸ばした方が得策なんじゃないの?」って言い続けてきました。

 僕たちはコストが高いから、規模では大きなメーカーには勝てない。それでは、環境技術で勝負しようといっても、1997年にトヨタ(自動車)さんがハイブリッド車「プリウス」を出しているわけでしょう。広くあまねくすべてをやろう、と理想を掲げることは簡単ではあるけれど、実体がなければむなしいだけです。総花的に戦うのではなく、僕たちが勝てるかもしれないところに経営資源を集中しました。

 スバルが集中したのは「安心と楽しさ」。ぶつからない車のキャッチフレーズで有名になった衝突回避システム「アイサイト」もその典型例です。会社のルーツである、中島飛行機時代からの安全思想が脈々と受け継がれていて、今のスバルの安全基準の高さがあります。表面的な“言葉遊び”で宣伝しているわけではなくて、会社の本質的な強みを訴求することで、お客さまに受け入れられた。これは、本当に素晴らしいことですよね。

 一般の社員に、努力が報われてよかったね、と素直に言ってあげたい。本当に真面目な社員が多い会社なので…。ようやく、お客さまや取引先などいろんなところで褒められるようになって、社員みんながスバルは強くなったんだ、と実感しているんじゃないでしょうか。