ピート・バジリエル
ガートナー
リサーチ・ディレクター

 2013年は3Dプリンティング技術への関心が高まり、ガートナーにおいても、1年間に12本のリポートが発行された。しかし、すでに7年前にジャッキー・フェンが最初にこのテーマを扱って以来、ガートナーはこの分野に注目を続けている。私が3Dプリンティングのリサーチと紹介を始めたのも2007年のことだ。

 直近のレポートは私とケン・ウェイラースタインが共同執筆したもので、2013年12月18日に米スリーディー・システムズ社が、米ゼロックス社のソリッドインク事業の製品設計部門、技術部門、化学部門、および付随する経営資源の一部を現金3250万ドルで買収するに至ったという発表に関するものだ。

 この声明にはきわめて注目に値する要素があった。というのも、あまり知られていないことだが、キヤノン、HP、京セラ、リコー、ゼロックスといった“2D”プリンターメーカーは、3Dプリンティング技術の知的財産権をすでに保有しているか、または3Dプリンター事業者向けにOEMで生産をしている。

 ゼロックスは過去17年間にわたり、スリーディー・システムズにテクノロジーを提供してきた後、声明発表後すぐに、経営資源だけでなく、3Dプリンティング技術の相当数の知的財産権の使用も含めて売却を決めたのだ。

 2次元の印刷機メーカーが 3Dプリンターメーカーに経営資源を売却するのは、私が知る限り初めてのケースだ。もちろん、スリーディー・システムズのような企業はこの数年間でM&A攻勢を積極的に仕掛けている。しかしこれまで買収してきたのは、他社の3Dプリンターのハードウェアやソフトウェア、サービス、素材供給会社やそれらの経営資源であり、2Dの印刷機メーカーの経営資源は対象外だった。

 この買収劇は読者の皆さんにとって何を意味するだろうか? その答えは、皆さんの市場での立ち位置によって変わってくる。

 ・3Dプリンターの顧客、または潜在顧客――3Dプリンティング市場でM&Aが加速しているからといって、現状の3Dプリンティング技術や3Dプリンターサービス業者への投資を取りやめなくてよい。

 ・3Dプリンター関連事業者――ハードウェアやソフトウェア、素材だけでなく、生産能力を強化するための投資に励んで、消費者や企業が求める3Dプリンターの質の向上に応えよう。この市場は2017年までに年率81.9%で成長し、世界で57億ドル以上の市場規模が見込まれるのだ。