「中二病」や「ショタコン」という造語を初めて聞いたとき、「うまいネーミングだなぁ」と感心したことがある。最近の流行は、STAP細胞に絡んで「リケジョ」だろうか。これは講談社が商標登録している。

 これらの表現は対象が特定されにくく、聞いた瞬間にイメージがパッと浮かびにくい。それに比べて「ハローキティ」という表現は、キャラクターと相まって、誰でも思い浮かべることができる。アクセントも絶妙で、うまいネーミングだと感心する。

 動物系のキャラクターを描くとき、子ども受けする秘訣は「人中」を描かないことだという話を聞いたことがある。人中とは、鼻の下から上唇にかけての縦の溝である。

 犬やウサギは、その溝が割れている。それに対して、サンリオが扱う「ハローキティ」「マイメロディ」「シナモロール」には、人中がない。あの「くまモン」にも人中がない。動物キャラに人中を描き加えると、リアルになるからだそうだ。

 筆者の住む栃木県小山市には、白熊に似せたゆるキャラがある。これにはくっきりと人中が描かれている。人気が今ひとつ出ない理由なのだろう。そもそも小山市には、牛・馬・豚などは一通り揃っているが、かんぴょう畑に白熊は出没しないことを断わっておきたい。

 それはともかく、今回扱うサンリオの特徴は、「ファブレス(工場を持たない)経営」と「版権ビジネス」にある。

 サンリオの連結貸借対照表や個別貸借対照表を見ると、仕掛品勘定(個別法による原価法)が若干計上されている。香港などの在外子会社に、ハローキティなどの生産工場があるのかな、と勘違いしてしまいそうだ。

 そうではない。サンリオは工場を持たず、約680社を相手に「特定の製品に対して当社特定デザイン・キャラクターを使用する権利の許諾」(同社有価証券報告書)によるのがメインである。したがって、サンリオの個別損益計算書の売上原価は、商品仕入高を中心に構成されることになる。

 こうした事業モデルを「版権ビジネス」という。