高齢者の見守りサービスといえば、電気ポットの使用状況から安否を確認するシステムがその黎明と言えるだろう。ユニークなCMで世間の耳目を集めたことも記憶に新しい。
その後、ガスや電気の使用量を測定するシステム、カメラを設置して宅内の様子を見守るもの、ドアセンサーで一定期間のドア開閉を検知するものなど、多様な見守りシステムが登場した。
矢野経済研究所によると、見守りサービスの市場規模は2012年度に168億円に達した。伸び率は、前年比で20%増という。
また、総務省統計局の発表によると、2013年の日本の高齢者人口(65歳以上)は3186万人となり、ついに総人口比は25%を超えた。さらに、一人暮らしの高齢者も急増しており、2035年には5人に1人が一人暮らしになると内閣府は予測する。
これは、見守りサービスを提供する事業者から見ると「市場の拡大」を意味する。この市場を狙い、様々な企業が参入してきたのがこれまでの流れだ。しかし、電気ポットはその商品を使用しなければならず、ガスは提供範囲が限られていた。電気は待機電力の発生や日による気温差によって使用量に大きな変化があるため、生活リズムの変化を捉えづらい。またカメラで撮影する場合は、プライバシーの侵害やストレスも問題となっていた。
水道の使用パターンが急変すれば
家族のスマホにメールが届く
そうしたなか、いま、新たな発想をベースにした見守りシステムが続々登場している。その進化を加速させているのは、「クラウド」と「ビッグデータ」だ。
ITホールディングス傘下のクオリカでは、岐阜県郡上市のNPO法人「つくしん棒」と共同で、水道管にセンサーを取り付け、水の使用量をクラウドに収集、解析するシステムを開発した。
「日常生活に必ず必要な水の使用量をリアルタイムに計測できるので、生活の変化が即座に把握できます」と語るのは、同社のテクノロジーインサイド事業推進室室長の宮下孝夫氏。何時間も水が使われないと、家族のスマホにメールが届く仕組みだ。