Photo by Jun Morikawa
今年1月、国の原子力損害賠償支援機構(原賠機構)の運営委員は、経済産業省幹部に組織改編の資料を提示され、思わず顔をしかめてしまった。
「賠償・廃炉・汚染水センター」。組織改編で誕生する新機構の仮称がこう記されていたためだ。
原賠機構は、そもそも福島第1原子力発電所の事故後から、原発事故に関連する損害の賠償と東京電力の経営合理化を主導してきた組織である。原発の事故処理が長引く中、新たに廃炉推進の機能が追加されることになったのだ。
原賠機構は、東電改革で結果を出してきたという自負があるだけに、「まさか廃炉センターなどという名前の機関で働くとは思わなかった」と委員の1人は戸惑いを隠せない。
経産省からも「賠償と廃炉はかなり業務が違う。一つの組織にするのは難しいのでは」(幹部)と疑問の声も聞こえる。
懸念が渦巻く中、政府は組織改編を盛り込んだ原賠機構法の改正案を閣議決定し、今国会での成立を目指している。
福島第1原発の事故から3年、廃炉や汚染水対策は国民の大きな関心事である。だが、なぜかくも違和感のある組織改編がなされることになったのだろうか――。
一番の理由は、廃炉や汚染水対策を東電のみに委ねる「東電任せ」の体制をあらためて、国が前面に立って指導力を発揮するためだ。このため、すでに東電との密な連絡が取れている原賠機構に機能を追加する形にしたのだという。