セオドア・レビットは、企業の中に広くマーケティング意識を行きわたらせる必要性を説き、マネジメント実践理論のマーケティング分野で中心的な貢献をした。
マーケティングの概念を宣言し、それに基づくマーケティング実践の考え方を広めたレビットは、さらに踏み込んでマーケティングの利点と問題点を一連の論文や著書を通して40年以上にわたって分析してきた。
彼は自身の見解を明快に解説し企業例やたとえ話を用いて説明する才能に長けているため、その著作は非常に読みやすい。
彼が巨匠としての地位を築くきっかけになったのは「マーケティング近視眼」という一編の画期的な論文のおかげだが、彼の広範な思想はその地位をいっそう確固たるものにしている。彼の論文や著書はマーケティングを中心に扱っているものの、マネジメントのあらゆる側面をも対象としている。
そして、それこそが彼が宣言したマーケティングの概念そのものであった。
人生と業績
ドイツのボルメルツで生まれたレビットは、1935年に両親とともにアメリカへ移住し、その後、経済学を学んだ。1950年代後半、シカゴでコンサルタントとして働いているときにハーバードビジネススクールからの誘いがあった。その当時、彼はマーケティングに関する本をまったく読んだことがなかったと伝えられているが、それにもかかわらず、ハーバードビジネススクールでは初年度からマーケティングを教え始めた。
レビットが最初に論文を発表したのは1956年だった。彼はハーバードでの教授職に30年以上も在任した。この間、「ハーバードビジネスレビュー」編集長も務めたが、物議をかもすこともあった。編集長職は、「マネジメントにおける女性」についての論文をめぐる論争の後、1990年に辞任した。
思想のポイント
レビットは、企業がマーケティングをビジネス戦略に加え、バランスの取れた方向性を実現することの必要性を強調している。彼は、マーケティング的発想を組織に浸透させ、生産・製品偏重主義を改めなければならないと説いた。
この「マーケティング近視眼」の理論を詳説した彼の画期的論文は1960年に「ハーバードビジネスレビュー」に発表され、現在も抜き刷りの希望が最も多く寄せられる論文の1つであり、これまでに50万部以上を売り上げている。