2013年から14年にかけて、北米で3件続けて大型の新規LNG(液化天然ガス)プラントを受注した千代田化工建設。この4月にはロシアからも声がかかった。当面は受注残高が積み上がる流れにあるが、“LNG一本足打法”からの脱却を目指す澁谷省吾社長は、エンジニアリングの在り方を変えようと動き出した。

しぶや・しょうご/1951年、山口県生まれ。大阪大学大学院修士課程修了後、76年に千代田化工建設に入社。最初の配属先は制御システム部。2000年、制御システム部長。05年、エンジニアリング本部長。11年、取締役兼常務執行役員兼技術部門長。12年、取締役兼常務執行役員兼技術本部長。13年4月より代表取締役社長兼CEOを務める。女子スキージャンプの高梨沙羅選手の大ファン
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──今年4月、千代田化工建設は、世界最大の産ガス国・ロシアのヤマル半島で進行中の新規大型案件「ヤマルLNGプロジェクト」に参画することになりました。もともと、この仕事の競争入札では、テニクップ(フランス)と日揮の連合軍と、千代田化工建設とCB&I(米国)とサイペン(イタリア)連合軍の“一騎打ち”となり、結局は敗れました。ところが、1年後に千代田化工建設だけに「ぜひ、来てくれ」とお呼びがかかったとか。なぜですか。

 当社は競争入札では破れました。ですが、事業主体のノバテク(ロシア)とトタール(フランス)の合弁会社が、ロシアで複雑な許認可の問題や環境保全の要請などと向き合って「サハリン2プロジェクト」を完成させた経験と実績を持つ当社の参画を要請してくれたのです。

 西シベリア北部のヤマル半島は、冬場は零下40度にもなるという極寒の地であり、年産550万トンの新規大型プラントを3系列ほぼ同時に建設するプロジェクトは、技術的な難易度が高く、誰もができるような仕事ではありません。