写真提供:三菱重工業
円高修正で一息つけたことから、業界再編の機運が後退したかに見えた造船業界で、再び動きが出てきた。
10月22日、三菱重工業、今治造船グループ(愛媛県)、大島造船所(長崎県)、名村造船所(大阪府)、三菱商事の5社は、ブラジルで急成長する大手造船会社のエコビックス・エンジェビックスに資本参加することを発表した。
現地に設立する特別目的会社には、日本連合5社が約300億円を投じてエコビックス社の株式を30%取得し、経営参画する。ほぼ半分を三菱重工が出資することで主導権を握り、技術者も送る。5社は、海洋資源開発で必要なFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)などの建造に関与し、ノウハウの蓄積を狙う。
エコビックス社は、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスに近く、来年にはブラジル最大手に躍り出るという勢いにある。プラント・エンジニアリングや発電ビジネスなどを手がけてきたグループを出身母体とする新興の造船会社で、ジェルソン・デ・メロ・アルマーダ会長兼社長は「目指しているのは、日本とブラジルの技術交流、生産性の向上だ」と述べた。
三菱重工の“再編構想”
この話は、過去にブラジルやベトナムで資源開発船を手がけた実績を持つ三菱重工が、単独では海外展開できない中堅メーカーを引き連れ、さらなる活路を求めて新天地へ向かうように見える。
だが、三菱重工の動きの背景には、もっと実利的な“隠された意図”がある。
例えば、2012年5月に三菱重工(国内8位)と今治造船グループ(同1位)は、あらためて対等な技術提携に踏み切り、“設計図面は三菱重工、安価な大量生産は今治造船”との役割分担が固まった。今日までに、両社は、コンテナ船や自動車運搬船、LNG(液化天然ガス)運搬船などで関係を深めている。