ソフトバンクによるTモバイルUS買収が「白紙」になった。ソフトバンクは、戦略の見直しを迫られる形となったが、すでにその先を見越して次々と手を打っているようだ。 

ソフトバンク傘下のスプリントによるTモバイル買収は一度「白紙」になったが、諦めた様子には見えない孫正義社長(写真は2014年2月)
Photo by Takeshi Kojima

 8月8日に開かれたソフトバンクの決算発表会。これまでは、好業績を発表する「孫正義劇場」ともいうべき場だったのだが、今回はいつもと様子が違っていた。

 毎回1時間かけて行われていた孫正義社長のプレゼンテーションが、この日はわずか35分程度で終わったのである。

 というのも、その2日前のこと、ソフトバンク傘下の米通信3位スプリントによる4位TモバイルUS買収交渉が、「白紙」となったことが明らかになったからのようだ。Tモバイルの親会社であるドイツテレコムとの交渉は、大筋合意に達していたにもかかわらずだ。

 白紙に至った理由は、何といっても、米当局が業界3位と4位の合併に対し難色を示し、認めるめどが立たなかったことにある。「2強2弱」の業界が3強に集約され、寡占化が進むことを嫌がったためとみられている。

 両社が正式に合意して買収手続きに入ったとしても、最大で1年に及ぶ長い審査期間を要する。その揚げ句に当局が認めないとなれば約2000億円の違約金が発生するため、これ以上の交渉は難しいと判断したというわけだ。

 ソフトバンクは、買収交渉が本格化した年初以来、表に裏に積極的なロビー活動を続けてきた。それでも、当局の“壁”を突き崩すことはできなかった。