出雲 ミドリムシの屋外大量培養に成功した時のことはよく覚えています。

出雲充(いずも・みつる)[株式会社ユーグレナ代表取締役社長]1980年、広島県呉市生まれ。東京大学農学部卒業。東京大学在学中の1998年、バングラデシュを訪れ、世界に存在する本当の貧困に衝撃を受ける。2年後の2000年、「ユーグレナ(和名:ミドリムシ)」のことを知り、世界の「食料問題」と「環境問題」を同時に解決できるそのポテンシャルに魅せられるも、培養技術が確立していないという壁の前に、一旦は事業化を断念。2002年、東京三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)に入行。2005年8月、株式会社ユーグレナを設立し、社長就任。東大発のバイオベンチャーとして注目を集める。同年12月には、世界で初めてユーグレナ(ミドリムシ)の屋外大量培養に成功。 食品、機能性食品、化粧品、飼料、そして燃料と、数多くの分野で事業化を目指している。2012年、2012年世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leader 2012 選出。著書に、『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました。』がある。

2005年の12月16日、夕方の4時20分くらいの出来事でした。研究担当の鈴木が「できました!」と石垣島から電話してきました。私は普段、そうした時は興奮するタイプです。一方で鈴木は冷静な研究者なのです。その鈴木が「できた!できた! できた!」と、喜びを大爆発させていて、私は全部喜びをとられてしまったんです(笑)。

 そして私は不思議と波のない水面のような落ち着いた気持ちで、ミドリムシの技術がサイエンスになった瞬間を受け止めていました。すごく落ち着いた気分だったのを記憶しています。その後に、ミドリムシの研究者は100人くらい日本にいるのですが、代表研究者にしてユーグレナの技術顧問の中野長久先生がお元気なうちに、ミドリムシがサイエンスになったことがたまらなく嬉しくなりましたね。

松久 出雲さん同様、「一生懸命生きる」のが私の生き方であり、情熱の源です。駆け引きをしながらではなくて、自分のやっていることに満足できる仕事をしたいと思って今まで生きてきました。死ぬまでこの生き方は変わらないと思います。今もそんなふうにして生きていられる自分が幸せです。

 60歳を過ぎた今、自分の人生を振り返っても、やっぱり“Maybe I did it.(もしかしたら、僕は成し遂げたのかもしれない)”なんです。まだ“ I did it.(成し遂げた)”とは言えないし、きっと一生言えないんだと思います。