日本の毎月勤労統計(厚生労働省)によると、8月の一般労働者の給与は前年比で1.4%増えた。ただし、インフレを考慮した実質賃金は2.6%の減少だった。

 消費税を引き上げた4月以降の消費の回復ペースが緩慢な原因の一つは、自分の賃金がインフレを超えて伸びて行くイメージを持てる人がまだ一部に限られているからだと思われる。

 こういった日本の状況とはかけ離れているのだが、海外には経営側が提示した7.35%もの賃上げを拒絶して、大規模なストライキに突入しそうな人々がいる。ブラジルの銀行職員労働組合だ(組合員数四十数万人)。

 ブラジルの銀行員の平均月給は円換算で約21万円。平均給与の倍以上と高給取りなのだが、組合は12.5%の賃上げを要求している。最近のブラジルのインフレ率は6.5%前後だ。7%台の賃上げでは実質所得の増加は少なすぎると、彼らは叫んでいる(ウォールストリート・ジャーナル)。

 実はブラジルでは、銀行員が全国規模で一斉にストライキへ入ることが年中行事なのだ。今年で11年連続となる。昨年のストライキはなんと23日間にも及び、リオデジャネイロだけで、約1000の営業店がその間、閉鎖された。

「GREVE=ストライキ」の張り紙で封鎖された、銀行の支店(2013年9月ブラジル・サンパウロ)
Photo:REUTERS/AFLO

 日本では、監督当局の金融庁が金融機関に対し、コンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)の策定を要求している。大災害の下でも、誰かは出社して店舗を開けられるよう求めているのだ。しかし、そんな日本の常識はブラジルでは全く通用しないのである。

 ブラジルでは他にも、日本の常識を超越したことが行われている。ブラジルでは公務員も遠慮なくストライキを行うのだが、中央銀行職員も例外ではない。彼らは2012年8月に23%の大幅な賃上げを要求してストライキを敢行した。

 当時、ブラジル中銀幹部はインフレ率を低下させられないかと苦慮していた。インフレ制御における当時の大きな問題は、政府が最低賃金を毎年大幅に引き上げていたことにあった。12年の引き上げ率はなんと14%だ。その影響を和らげるため、中銀幹部としては公務員や民間企業に賃上げ幅を抑制してほしかったようだ。そんな時、当の中銀の労働組合が、最低賃金引き上げ率を凌駕する賃上げを要求したのだから驚きである。