「ゲーム化」するテクノロジーが僕らをハメる

 私たちは、子ども時代のおもちゃをどんどん大人の世界に持ち込むようになってきている。ソーシャルテクノロジーも“仕事”と“遊び”の境目で私たちをたぶらかす。本質的には1990年代のMSNメッセンジャーと変わらないチャットアプリケーションのツイッターも、以前なら、単なるソーシャル系のおもちゃとみなされただろうが、今では、プロが使う強力な伝達ツールになっている――職場における第一の通信手段として、電子メールをツイッターに置きかえているところさえあるほどだ。

 しかし、ツイッターは電子メールとは重要な点で異なっている。2000年代の他の“Web2.0”製品と同様に、ツイッターではいよいよ“ゲーム化”が進んでいるのだ。企業は、ゲームからヒントを得て、顧客を病みつきにさせようとしている。あなたが使っていた電子メールソフトは、時間がある限りそれを使っていたい気持ちにさせるようにはデザインされていなかったろう。だが、ツイッターでは、はじめからそれが意図されている。

 それに、「フォースクエア」を考えてみるといい。これは、リアル世界の場所に“チェックイン”することにより、自分がどこにいるかを、いつなんどきでも友人に知らせることができるSNSだ(不思議なことにユーザーは、しゃれたレストランで食事をしているときや、エキゾチックな外国の都市に到着したときに、チェックインする必要を強く感じるらしい)。フォースクエアでは、さまざまな達成度――“アチーブメント”と呼ばれる――に応じて、“バッジ”を提供し、ユーザーをねぎらう。使われる言葉やユーザーインターフェースの要素は、ビデオゲームで使われていたものをそのまま流用したものだ。

 興味深いのは、そもそも、そんな行為が“ねぎらわれる”ことだ。強迫性障害を持つ人の障害がねぎらいの対象になることはほぼないが、(ゲームの)ファームビルでは、無意味で反復的な強迫性障害タイプの行為が、眉をひそめられるどころか激励される。こういったソフトウェアが、社会的な励ましと自尊心をくすぐるメッセージというちょっとしたフィックス(すぐに気分をよくしてくれるモノ、経験)をユーザーに浴びせかけるのも偶然ではない。

(続く)

※本連載は、『依存症ビジネス』の一部を抜粋し、編集して構成しています。