薬のネット販売規制を巡る議論について持論を書こうと思っていたら、3月12日の日経新聞の朝刊一面に気になる記事が出ていた。

 セブン&アイ・ホールディングスが、6月の改正薬事法施行で薬剤師がいなくても一般用医薬品(大衆薬)を販売できるようになる「規制緩和」を受け、調剤薬最大手のアインファーマシーズと5月を目途に共同出資会社を設立し、低価格ドラッグストアの全国展開に乗り出すという。割安なプライベートブランド(PB=自主企画)の医薬品も開発・販売し、傘下のコンビニエンスストアでの大衆薬販売も視野に入れているという。

 また、同紙の13面には、大衆薬市場の成長への期待に加えて、イオンやマツモトキヨシホールディングスなどドラッグ大手も対抗策を打ち出す可能性があるといった分析記事も掲載されている。

 この報道だけ見ると、薬の販売規制は緩和されるように見える。しかし、筆者は、他方では、薬のインターネットを通じた販売が規制されようとしていることで論議を呼んでいると聞いていたので、このニュースに意外感を持った。

 薬のネット販売規制を巡る議論の経緯をざっと整理すると、平成18年6月に、副作用のリスクに応じて大衆薬を三種類に分類することや、「登録販売員」――資格取得のハードルは薬剤師よりも低い――という新資格を設けることなどを柱とする改正薬事法が国会で成立した(今年6月に施行)。その後、検討プロセスを経て、今年2月に改正薬事法と同時に施行される厚生労働省の省令が公布された。この中で、薬のネット販売が大幅に制限されることが示されたのである。

 具体的には、省令は、最もリスクの低い第3類の大衆薬を除いてネット販売を含む通信販売を禁止する内容となっている。ちなみに、第1類は最も副作用のリスクが高いもので、薬剤師しか販売できない。胃腸薬の「ガスター10」や発毛剤の「リアップ」などがこれに当てはまる。第2類は、風邪薬の「パブロン」や漢方薬の「葛根湯」など売れ筋の大衆薬で、これは薬剤師または新設の登録販売員が取り扱うことができる。ここがボリュームゾーンで大衆薬の約9割という報道もある。第3類は、人畜無害といったら怒られるが、ビタミン剤や目薬、うがい薬など副作用があってもごく軽いと考えられる薬品だ。