変化速度が高まり続ける現代、経営のアンカーは
「戦略」から「ブランドビジョン」へ

 グローバルブランド、日本ブランドを問わず、これまでのマネジメントの「王道」は、一連の施策の集合体である「戦略」を策定・決定し、それを単年度および中期計画に落とし込んでいくことにあった。アルフレッド・チャンドラーが、名著「組織は戦略に従う」を上梓した時期が、その戦略計画優先時代の始まりと合致しているのではないであろうか。

 しかしながら、特にこの10年、企業を取り巻く環境変動要因や競争関係の変化があまりにも激しく、戦略の前提がすぐに崩れてしまうことが継続的に発生している。これまでも、その環境変化に対応するための戦略立案の枠組みやプランニング手法が開発されてきたが、抜本的な経営の枠組みの変更ではないことが多い。

 従って、最近では、リタ・マグレイスが「競争優位の終焉」で看破したとおり、「一時的競争優位の獲得」の積み重ねが、強い企業を作っている。そして、そのような経営に移行する際に、「戦略」に代わって経営のアンカーになっているのは、いかなる領域でどのような価値を提供していく企業なのかを明確にする、「ブランドビジョン」となっている。

 本連載でも繰り返し述べてきたとおり、ブランディングとは、いわゆるCIやタグラインのメッセージングを中心としたマーケティングや広告、デジタルマーケティング、販促のことではない。ブランディングとは、戦略と対をなす経営の軸であり、強力なグローバルブランドは、ブランドビジョン中心の経営に移行している。そして、「ブランドビジョン」を企業活動の隅々まで落とし込んだ上で、着実に、かつ高速に事業の方向性とトータルオペレーションの変化を推進することで、ブランド価値を向上させ、結果として将来に渡る高収益と、企業価値の向上に直結させているのだ。

「日本ブランド」の真の変革へのリーダーシップは誰が担うか――CBO(Chief Brand Officer)の必然性

 長年にわたってブランドビジョンを主軸にした経営で高ブランド価値を実現し、高収益を達成してきた代表的な企業のひとつが、BMWだ。

 BMWでは、「駆け抜ける歓び」というブランドビジョンのもと、R&D、新モデル開発、ディーラーシップ・デザイン、顧客対応、広告・宣伝、デジタルマーケティング、リクルーティング、購買活動におよぶ全ての企業活動が整合を取って運営されている。ブランドビジョンがはっきりしているからこそ、イノベーションや企業変革がぶれることなく、成果を出すのである。