実力をブランド価値へと転換できない
「日本ブランド」のジレンマ

 2014年10月、インターブランドは「ブランド価値」によるグローバル・ブランドランキングBest Global Brands2014を発表した。

 昨年に引き続きAppleとGoogleがそれぞれ第1位と第2位を堅守し、両社ともに1000億ドルを 超えるブランド価値を記録したことに加え、Huaweiが中国ブランドとして初めてランキングに顔を出し、ベストグローバルブランドの歴史を作ったことを報道等で目にされた方も多いだろう。

「日本ブランド」の真の変革へのリーダーシップは誰が担うか――CBO(Chief Brand Officer)の必然性Best Global Brands2014

 翻って日本ブランドを俯瞰すると、Toyota、Honda、Nissanら自動車勢を中心にブランド価値を着実に伸ばした企業は存在するものの、未だ、日本ブランド全体での存在感は大きいとは言い難い。

 インターブランドはBest Global Brandsと併せ、日本企業のブランド価値を図るJapan’s Best Global Brands(海外売上比率が30%以上の日本企業を対象)、Japan’s Best Domestic Brands(海外売上比率が30%未満の日本企業を対象)という2種類のランキングも発表している。このランキングによると、Best Global Brands全体のブランド価値成長率(過去2年間の平均)が8.4%であるのに対し、Japan’s Best Global Brands及びJapan’s Best Domestic Brandsを合わせた日本企業全体のブランド価値成長率は2.7%に過ぎない。言い換えれば、グローバルのトップブランドは、日本ブランドの3年分のブランド価値成長を、わずか1年未満で達成してしまう。

 私たちインターブランドジャパンは、日本ブランドの新たな飛躍を願い、これまでの8回の本連載を通じて、年々高度化するブランディング技術を概観し、それらを活用することで企業価値を向上させる戦略について提言してきた。その根底にあるのは、最新のブランディング技術を生かすことが至極当たり前な経営活動となっているグローバルブランドに対して、日本ブランドの多くは、未だにその意識が希薄なケースが多いという認識である。

 強力に成長するグローバルブランドと日本ブランドを比較すると、従来のあらゆる枠組みを超えた発想から、自らの事業コンセプトや事業目的をシンプルに再定義し、組織の自律的イノベーションや継続的変革をもたらす力、顧客体験や提供価値を客観的な視点から修正し続ける力は、見劣りすることがある。その差は、「ブランドを中心にした経営」を実行できているか否か、から生まれるケースが多いというのが、我々の分析である。