CBOが担うべき役割(1):
研ぎ澄まされ、ストーリー化されたブランドビジョンを策定する

 CBOの役割が有効に機能するためには、「いかに正しいブランドビジョンを持つか」、が起点である。CBOが果たすべき役割の第一歩は、「自分たちがどこに行きたいのか、どんなブランドになりたいのか」を、総花的リストアップにせず、絞り込み、研ぎ澄ませながら、具体的に示し、「どのような顧客」に対して「どのような価値、喜び」を提供していくかというブランドビジョンを、一つのストーリー的に策定することである。自分たちの持っているリソースを多面的に捉え、社会の課題を踏まえ、変化に対する感度を高く持つためにボトムアップアプローチの良さを活かしながら、大きな方向性を示すことで、ブランドビジョンがリアリティを増していく。

 P&Gのブランディングに、新しいブランド体験を創造した好例を見ることができる。

 過去、P&Gは各商品ブランドを中心にしたプロダクトマーケティングを展開してきたが、その手法ではP&Gと顧客の絆が深められないという課題に直面していた。そこで、P&Gはロンドンオリンピックを契機に『Thank you, Mom』グローバルキャンペーンを導入した。キャンペーンの趣旨は「母親の役割と重要性」を世の中に広め、P&Gは主要ブランドを通じて、「母親を応援している」企業であることを理解してもらうことにあり、P&Gの174年の歴史(当時)の中で最も大規模なキャンペーンとなった。

 その内容は、オリンピック代表に選ばれた選手は、必ず誰かの子どもであり、その母親たちがどのように自分の子の成長を支えているかを、感動的なショートムービーに描いたものだ。「Thank You Momアプリケーション」も立ち上げ、自分の母親へ「ありがとうメッセージ」を送る消費者キャンペーンも展開された。誰もがP&Gが提示した「母親の役割と重要性」を理解し、P&Gブランドに共感できる仕組みとなっている。そこには、短期的な売上拡大の意図は一切存在しない。ひたすら母親の重要性と、そこに対してP&Gが応援していく姿勢を伝えるのみである。

 このキャンペーンで注目すべきなのは、アリエール、ボールド、レノア、パンパース、パンテーン、ジレット、ファブリーズなど、P&Gが保有する主要ブランドを串刺しにした展開であり、社員、メディア、小売業と連携した一体型のプログラムとなっている点だ。さらに、この活動は、2014年2月のソチ冬季オリンピックでも継続展開され、世界中の200万店舗の小売業も参画し、世界的なインパクトのあるキャンペーンとなった。