日本銀行の異次元金融緩和策が導入されて1年半以上がたった。10月末には追加緩和策も決定された。しかし、多くの人がここにきて感じ始めているのは、「インフレ率が上がっても、それだけでは生活は良くならないし、経済は成長しない」という現実だと思われる。
やはり「第一・第二の矢」(金融・財政政策)だけでは駄目で、「第三の矢」である成長産業の育成が重要といえる。その点で米シリコンバレーは“お手本”ではあるが、先日の出張時に散策して、あらためて彼我の差を強く感じた。
シリコンバレーはサンフランシスコ市内から車で50分前後の距離にある。ハッカー・ウェイという名前が付いた道に、巨大な「いいね」マークが立っている。フェイスブックの本社だ。その他にも、インテル、ヤフー、グーグル、アップルなどハイテク企業の広大な本社キャンパスが次々と現れる。
サンフランシスコが霧で肌寒くても、こちらはからっと明るく太陽が輝いている。グーグル本社のキャンパスには屋外に大きなカフェテリアがあって、社員が爽やかな空気の中でランチを楽しんでいる。社員は3食無料だ。彼らの服装は東海岸の金融・弁護士業界とは全く異なって、リラックスしたムードであり、人種も多様である。
Photo by Izuru Kato
スタンフォード大学近くの住宅街には「シリコンバレー発祥の地」という看板が立っている(写真)。「シリコンバレーの父」と呼ばれる同大学のフレデリック・ターマン教授は「東海岸の大企業に就職せず、ここで起業せよ」と学生たちに説いた。そのアドバイスを受けて写真に写る家のガレージで起業したのが、ヒューレット・パッカードの共同創業者、ウィリアム・R・ヒューレットとデイビット・パッカードだった。