生活保護利用者のアパート家賃が高くなりやすいという事実は、「住宅扶助基準を引き下げるべき」という主張の根拠となっている。その背景には、生活保護利用者に対する入居差別や、生活保護利用者が抱えていることの多いリスクがある。では、背景となっている「入居差別」「リスク」の問題そのものを解決できる可能性はないだろうか? 具体的な状況を熟知した不動産業者からは、何が生活保護の「住」の問題に見えるだろうか?
アパートの家主たちは
生活保護利用者をどう見ているか
2013年7月に始まった生活保護費の生活扶助引き下げに続き、現在、社会保障審議会・生活保護基準部会では、住宅扶助に関する議論が続いている。委員たちの多くは単純な引き下げには反対する立場だが、厚労省の用意した資料からは、「引き下げたい」という意向がありありと感じられる。
その背後には、財務省の「住宅扶助は高すぎる」という意向がある。根拠とされているのは、
「生活保護利用者は、住宅扶助の上限額(東京都で、単身者に対して5万3700円)に近い賃貸住宅に住んでいることが多い」
という調査結果である。
生活保護の「住」が割高になる背景には、「入居差別」がある。割高な家賃を支払わなければ、生活保護利用者が住居を探すことは困難という事実がある。そもそもなぜ、生活保護利用者は入居差別に遭うのだろうか?
不動産業者のKさんは、
「生活保護を利用している方が賃貸物件に入居しづらいのは、リスクが高いからです。滞納、夜逃げのリスクは高いですね。生活保護を利用していない方の中にも滞納したり突然いなくなったりする方はいるのですが、私の勤務している会社で仲介した方の中では100人に1人か2人くらいです。生活保護を利用している方だと、100人のうち5人くらいにはなります。高齢の方だと、さらに死亡リスクがあります」
という。5%が滞納または夜逃げとは。これは、考慮しないわけにはいかない大きなリスクだ。
「だから、管理会社は貸したがらないんです」(Kさん)
生活保護利用者の家賃は、福祉事務所が「代理納付」することができる。福祉事務所が家主に直接支払う制度だ。これを利用することはできないのだろうか? そもそも住宅扶助は、住宅の現物を給付する制度である。筆者には、代理納付のほうが本来の趣旨にかなっているように思える。Kさんの意見はどうだろうか?