中国が世界の中心であるためにその布石を打つ中国。中国はIFRSに限りなく近い独自の会計基準を使って、「引進来、走出去」(外資を自国に引き込み、自らが国際市場に打って出る)という国家戦略を遂行する。
会計基準を国際的に統一していくという流れ、その回転速度がここに来て急速に速まった。日本でもIFRS(International Financial Reporting Standards)の適用をめぐり、上を下への大騒ぎである。一方、隣国の中国はどうか。
IASB(International Accounting Standards Board、国際会計基準審議会)が公表する地図には、中国は「IFRSを採用または容認する国・地域」として青く塗られているが、導入国とみなすのは正確ではない。中国は、中国の会計基準は独自の基準であり、IFRSではないことを主張している。
2006年、中国財政部は新しい会計基準(新企業会計準則、「準則:zhun ce」は中国語で基準の意)を発表した。企業会計基準(基本準則)は、「16の具体基準」と「38の改訂された基準(07年1月より施行)」を含んでおり、その大部分がIFRSを手本にして作られている(図参照)。中国は国内基準を整備するために、国際基準をお手本として利用した、というのがむしろ正しい解釈だといえる。
中国が改革開放政策に切り替えたのは1979年。だが、93年に複式簿記が導入されるまでは、計画経済を色濃く残す単年度決算を行っていた。「損益計算書」という名称すら存在せず、そもそも「利益」という言葉は搾取の対象、「資本」という言葉もまた当時のイデオロギーに反するものだと捉えられていた。改革開放に転じた79年以降、多くの外資企業が進出したとはいえ、旧会計制度下では国営企業と外資企業の財務諸表は全く異なるものとなっていた。