【2】
歪みや偏りあるところに「脇役」あり

 光る「脇役」を見つけるのにもポイントがあります。

 そもそも脇役とは、「偏っている」ところによさがあるわけです。偏っているからメインにはならないんですが、そこが個性になっています。ネガティブにも転ぶけれども、ポジティブにも転ぶ、それが個性ある脇役です。

 つまり、歪みや偏りを額面通りに受け取らず、ポジティブに受け入れることこそが、「脇役」発見のカギとなります。

 こうした脇役は、料理次第で毒にも薬にもなります。あとは主役と脇役のバランスを考えながら、課題解決のための調理方法を考えていけばいいわけです。

 ちなみに、時にはキラーコンテンツが複数あることもあります。主役がたくさんいるようなものです。そういうときは、そのうちのいくつかをあえて脇役にしてみることで、新しい選択肢が見えてくることもあります。

【応用編】
「カタチ」が主語のチョコ、作っちゃいました。

 毎年2回、パリで開催されるインテリア雑貨やデコレーションの国際見本市「メゾン・エ・オブジェ」。今年、「デザイナー・オブ・ザ・イヤー」を受賞したのですが、それに合わせて、「chocolatexture(ショコラテクスチャー)」と名づけたチョコレートを作りました。

 カカオの原産地や種類、含有率、ショコラティエの技術、中に入っているフレーバーなど、チョコレートの味を左右する要素はいくつもあります。ですが、新たなチョコレートを考えるにあたり、これらの要素に頼るのではなく、あえてチョコレートの「形」のみに注目することにしました。

 そうです。「脇役」である形を「主語」にした新しいチョコを、自分の受賞の記念に、自分でデザインしたのです(笑)。

 用意したのは全部で9種類。すべて26×26×26mm内に収まる大きさに統一しつつ、先端が尖っていたり、内部が空洞だったり、表面が滑らかであったり、ザラついていたり……と、1つ1つの「形」を変えて異なる食感を演出することで、同じ原材料ながら味の変化を生み出す、というアイデアです。

 9つそれぞれに、次のような食感を表す日本語の擬音を、より形を味わえるようにそのまま名称としてつけました。

1.「tubu-tubu」たくさんの粒子が集合した形
2.「sube-sube」カドのない、滑らかな形
3.「zara-zara」表面がヤスリのようにザラついた形
4.「toge-toge」先端が尖った鋭利な形
5.「goro-goro」14個のキューブがカドでつながっている形
6.「fuwa-fuwa」たくさんの穴がある形
7.「poki-poki」四周が線状の、骨組みのような形
8.「suka-suka」薄い壁でできた、中が空洞な形
9.「zaku-zaku」細い棒状のチョコが互い違いに積み重なった形

「光る脇役」が重要なのはドラマだけじゃない!

 と、アイデアを考えたはいいものの、実現に至るまでは試行錯誤の連続。最後は、職人さんの繊細な手仕事のおかげで完成にこぎつけ、大好評となったようでした。

「光る脇役」が重要なのはドラマだけじゃない!Akihiro Yoshida