国内景気は減速が強まってきた。景気指標は悪い数字が増えている。景気の弱気見通しが強まり、日本の金利の先高観測は後退した。
米国景気も減速感が強まっている。またサブプライムやモノライン問題の波及による流動性の収縮懸念も強く、米国当局は思い切った利下げ政策に転じた。これが日米の金利差の縮小をもたらし、円高・ドル安を呼んでいる。
投資資金は軟調な各国株式市場を嫌って商品市場に流れ、原油先物価格(WTI)は1バレル=100ドルを上回って推移している。2007年1月は1バレルが50ドル台。この1年間で2倍となった。
こうした低金利、円高、そして原油高は今後も続くか?
まず金利は、国内景気の減速感が強まるなか、当面低金利が続くと思われる。次に円高はどうか? 米国では年央に向けて、利下げや景気対策の効果が表れ、米国見直し機運からドル高・円安となる局面もありうる。しかし基本的には、日米の金利差の縮小は続き、円安へのトレンド転換は考えにくい。
原油価格については、世界的な景気減速は下落要因となるが、世界的な流動性供給、投資マネーの流入は持続すると考えられる。
では、低金利、円と原油の高止まり持続の株価への影響をどう見るか? 低金利は基本的に株価にプラス、円高はマイナス、原油高の行き過ぎは原材料価格を押し上げるためマイナス材料といわれる。
しかし株式市場全体にはネガティブでも、業種によってはプラスに働く場合もある。たとえば、原油高では鉱業、石油・石炭製品や商社などがメリット株とされる。実際、資源の採掘関連の業種は収益にプラス寄与が期待される。代替エネルギー関連株なども追い風を受けるだろう。
こうした定性的な判断でなく、統計的な手法を使って原油高に連動する銘柄を抽出したのが右の表である。表中の「関係性」は最大が1を取る値で、1に近ければ原油高に反応して上昇しやすいことを示す数値(相関係数)だ。また「連動性」(感応度)は、これまで原油がWTIベースで1%上昇すると、何パーセント連動して動いてきたかを示している。
上の図は低金利、円高と原油高の3つについてメリットがある業種(東証33業種分類ベース)を探ったものだ。関係性が業種別の順位で20位以内、連動性が15位以内のものを、それぞれ選んでいる。3つとも該当する医薬品とサービスは過去、低金利、円高と原油高に強かった業種である。投資の参考にしてほしい。
(大和総研投資戦略部チーフクオンツアナリスト 吉野貴晶)