CSRやCSVなどが注目され、「社会貢献は企業成長のドライビングフォースである」と言われて久しいが、「さっぱり実感がわかない」「成果も見えない」というのが大方のビジネスパーソンの本音だろう。むしろ昨今では、CSV批判の論調さえあり、正直に言って社会貢献を自分のミッションとしている僕でさえ、日本のCSRシーンについてはある種の停滞感を感じている。

 しかし、それは何もCSRやCSVのせいではない。「企業の捉え方の問題」なのである。そこで今回は、企業が成長するためになぜ、NPOから学ばなければならないのか。そして何を学ぶべきなのか。それについてお伝えする。

『NPOの教科書』が
僕に教えてくれたこと

 多くのCSR関係者は、企業はNPOから学べと言う。実際、CSRに熱心な企業もNPOから何かを学ぼうとしている。しかし、では「何を」NPOから学ぶべきか。そこを間違っているから、NPOから何も学べず、したがって企業は自分たちの事業活動に何もフィードバックできず、CSRは結局のところ役に立たない、企業の成長には寄与しない。そんな空気感さえ醸し出しているのではないか。僕にはそう思えてならないのだ。

『初歩的な疑問から答える NPOの教科書』 乙武洋匡/佐藤大吾[著]、日経BP社刊

 そんなことを改めて考えるきっかけになったのが、最近リリースされた一冊の本『初歩的な疑問から答える NPOの教科書』(日経BP社刊)である。これは、ベストセラー『五体不満足』の著者・乙武洋匡氏がNPO初心者として、NPO業界17年のキャリアを持つベテランの佐藤大吾氏に、NPOにまつわるさまざまな疑問をぶつけ、佐藤氏が回答する、という問答集のスタイルをとった本である。

 表紙には「初歩的な疑問から答える」と銘打っているように、「NPOは、株式会社や役所と何が違うの?」「NPOとNGOは何が違うの?」「職員の給料や賞与ってどうなっているの?」など、初歩的というか、基本的なことだが多くの日本人がよくわかっていない疑問に、佐藤氏が丁寧に回答している。

 ただし、これをNPO初心者のための本であるとか、これからNPOを作ろうとか、就職したいと考えている社会貢献志向を持つ若者のための本である、と考えたら大間違いである。むしろ、NPOのことがわかったつもりになっている人たち、とくにNPO経営者や幹部スタッフ、すでにスタートアップしている社会起業家、そしてCSR関係者、つまり“現役のプレイヤー”にこそ、読んでほしい本である。

「NPOの教科書」というタイトルで判断して、現役プレイヤーの多くは、たぶん自分たちには関係ない本であるとか、いまさら読む必要はないと感じるだろうが、実は現役プレイヤーこそが読むべき本であり、さらに言えば、CSR関係者や企業経営者も必読の書である。

 かく言う僕自身、当初は読む必要性を全く感じていなかったのだが、佐藤大吾氏への義理もあって読んでみたら、自分の認識の間違いに大いに恥じ入った次第である。