5月初めにかけて、原油相場はかなり速いペースで上昇してきた。5月6日の終値を3月末と比べると、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で28%高、ブレントで23%高だ。
上昇の背景には、それまで原油需給緩和の主因となっていた米国のシェールオイルの増産に歯止めがかかり、原油需給の引き締まり観測が徐々に強まってきたことがある。増加を続けてきた原油在庫も、5月8日に終わる週には、17週ぶりに減少に転じた。今後、ガソリンを中心に原油需要が増える時期になることもあって、需給引き締まり観測がさらに強まりやすい状況になっている。
もっとも、原油市況は、こうした状況を先読みしてきた面もあり、現在相場の上値は重くなっている。原油相場が上昇に転じたことを受けて、採算割れから減産の動きが見え始めた米国のシェールオイルが再び増産に転じるため、原油価格は再び下値を試すとの見方も出ている。
原油需要の動向については、欧州景気に改善の動きが見られるなど、世界景気の下振れ懸念は後退し、原油需要の見通しもやや上方修正される動きが出ている。
だが、中国経済は不動産部門の停滞が続くなど減速感が残っている。景気が底堅さを保つ米国でも足元はやや弱めの指標が少なくない。当面、世界景気の拡大テンポや世界の原油需要の増加ペースは、ゆっくりとしたものにとどまるだろう。