前回は、ワガママちゃんとのコミュニケーションの仕方について、具体例を挙げてお話しました。今回も引き続き、「ワガママちゃん」と職場で行うコミュニケーションのコツを解説していきます。
企業内でギャングエイジを
疑似体験させる機会をつくる
自分の仕事が終われば、さっさと帰宅してしまう。さっきまで手伝ってもらっていた先輩が、その分時間が押して残業していても、「じゃあ、お先失礼しま~~す!」と明るく悪びれずに帰って行く、これがワガママちゃんの特徴です。
彼らは狡猾な計算で先輩を利用しているのではありません。「人のココロの痛み」にまで思いをはせる「人格的な成熟が遅れている」のです。
このような彼らを成熟させる可能性は、実は、ブラザー制度にあります。繰り返し説明してきましたが、彼らにはギャングエイジ体験が欠落しています。同世代や近い世代とともに群れをなして揉まれた体験が極めて少ない世代です。ですから、彼らにとっては、少し上の「アニキ的な存在」がとても新鮮です。
「業務経験においては自分より多少は優れている、でも人生経験においては自分とはさほど違いがない」というレベルの、腹を割って話せる同性の先輩が彼らを牽引します。彼らは入社して初めてギャングエイジを体験すると言っても過言ではありません。
皆さんも思い返してください、小学校高学年の頃、ちょっとした困りごとは誰に相談していましたか? 担任の先生ではないですよね、信頼できる同級生や面倒見のよい上級生だったりしたはずです。もちろん大問題は先生に相談したでしょうが、その前に、先輩に相談して一緒に先生のところに行ってもらったりしませんでしたか?
また、あこがれの先輩がいて同じ野球部・サッカー部に入った、とかの経験はありませんか?
私たちは、そのような「遠くはない距離感」の同性の存在に支えられて成熟してきました。つまり「ワガママちゃん側」で一緒になって共感してくれる、ちょっと上の先輩・ブラザーが彼らの不安感を下支えします。
もし制度として設けられていなくても、先輩社員が後輩社員の面倒をみることは、日本的な企業文化においては、以前より行われたていたことです。あなたの部下に「ブラザー」の役割を担わせる際には、その対応のポイントとして、受容・傾聴のステップから共感のレベルまで持って行くことが重要であることを伝えてください。これは第3回で取り上げましたが、改めて確認してみましょう。