秘書室長は秘書の気持ちがわからない?

 企業の秘書室長の方から、よくこんな相談を受けます。

 「秘書の本来の役割は、何ですか?」
 「秘書の教育は、どのように行えばいいですか?」
 「秘書のモチベーションを維持するためには、どうすればいいですか?」
 「秘書の人材活用法を教えてもらえますか?」

 これらは、あくまでも一例ですが、なぜ、このような質問が多いのでしょうか?

 それは、秘書として働いた経験のある秘書室長がとても少ないからです。

 たとえば、営業職の場合、営業成績の良い社員が、営業課長や営業部長、そして営業本部長へと昇進することが多いでしょう。役職が変わっても、営業の経験があるため、過去の自分の経験と照らし合わしながら、部下を育成することができます。そのため、部下の気持ちや行動を理解しやすいでしょう。

 ところが、秘書室長の多くが、秘書経験が無いがゆえ、右往左往してしまうようです。

 秘書向け研修やコンサルティングを通じてわかったことは、秘書室長、もしくは、秘書チームを統括する人と、秘書たちとの間に「軋轢」が生じていることが多々あるということです。

 前者は、「秘書の人たちが、思うように動いてくれない」と頭を悩ませ、後者は、「秘書室長は、私たち(秘書)のことを全くわかってくれない」と、中には、秘書室長を目の上のたんこぶのように思っている人もいます。

 わかりあえない秘書室長と秘書の人たち。

 また、秘書室長は、経営層からの様々な指示や依頼により、秘書と経営層との間で板挟みになってしまうケースもよく見受けられます。

秘書の仕事ぶりが
会社の運命を左右する

 秘書室長や秘書チームを統括する人は、組織における「秘書室」の役割(「秘書室」が存在しない場合は、「秘書」の役割)を定義し、秘書の職務を明確化しなければなりません。ところが、実際のところ、「秘書室」や「秘書」の役割は、なんとなく定義されているだけであって、明確に定義されている企業は、あまり多くありません。

 秘書は、経営層を補佐する重要な役割を担っています。秘書が活躍すれば、経営層の仕事の生産性が高まり、会社の業績も大きく変わってきます。