現金、不動産、有価証券など、相続財産にもいろいろあります。「遺産の大部分は預金です」というケースなら、ある意味、分けるのは簡単。困るのは、例えば「主な資産は自宅で、現金は僅かしかありません」という家庭です。そのままでは、自宅を相続する人と、それ以外の相続人との間に、大きな「格差」が生じるのを避けられません。そこに、「私が親を介護したんだから、家をもらって当然だろう」といった感情が絡むと、相続はまさに泥沼に。そうならない妙案はあるのでしょうか? 相続に詳しい斎藤英一税理士(税理士法人斎藤会計事務所)に聞きました。
遺産の5割超が不動産
八木 「親の遺産」とひとことで言っても、預金や不動産など、いろんな種類があります。
税理士/税理士法人斎藤会計事務所所長
1988年の事務所開業直後から会社設立支援に力を入れ、創業・融資・事業拡大と100社を超える経営計画のサポ-トを行う。近年は高齢の親を持つ子世代を対象にしたWebサイト「オヤノコト.net」で自らの体験を生かした相続人向けの相続について連載。またハウスメ-カ-や銀行主催の相続税セミナ-講師も務める。著書に『親子で進める二世帯住宅節税』(幻冬舎)など。
斎藤 金額的に一番大きいのは何か、ご存知ですか?
下の表を見てください。国税庁調べによる、相続財産の種類別の金額(2011年)です。あくまでも全体の話ですけど、圧倒的に土地が多くて、建物と合わせた「不動産」で括ると、総額の50%を超えるんですよ。
八木 ところが、分けようと思えばスパッと分けられる現金と違って、不動産の相続には、いろいろと大変なことも多いんですよね。
斎藤 そうです。相続される不動産が複数あったら、遺産分割協議の場で、誰がどの不動産をもらうのかを決めなければなりません。分けたのはいいけれど、そこに相続税がかかってくる場合には、そのための資金を確保する必要も出てきます。相続財産の大半が不動産で、現金はあまりもらえなかったために、相続税の支払いに窮してしまった、という話は、そんなに珍しいことではありません。
一番難しいのは、「相続財産の大半は自宅」というケースです。例えば、長男夫婦と同居していた親が亡くなって、相続が発生。ところが、自宅以外に財産がほとんどなければ、残りの兄弟はもらおうにも、もらうものがない、という状況に陥ってしまうかもしれないわけです。