病床数700床、手術室を20室備える日本最大のがん専門病院、がん研有明病院。今では、日本ばかりではなく海外から患者が訪れるほど、世界的にも名高い、がん医療を先進的に行う病院だ。『ダイヤモンドQ』が行ったがんに強い病院ランキングでも、1位となった。「患者が主役のチーム医療」を方針に掲げる同院だが、同様のコンセプトを掲げる他の病院とはどう違うのか。2015年7月より新病院長に就任した山口俊晴病院長にがん研有明の圧倒的な実力を誇る理由と将来像について、話を聞いた。(聞き手/医療ジャーナリスト 渡邉芳裕)
年間1万例の手術にも対応可能
がん研有明の「チーム医療」体制
――7月、がん研有明病院の病院長に就任されました。国内外からも注目される病院である理由をどう捉えていらっしゃいますか?
がん研有明病院病院長。 1973年京都府立医科大学卒、アメリカテキサス大学ヒューストン校留学、95年に京都府立医科大学助教授に。2001年財団法人癌研究会付属病院消化器外科部長を経て、2005年同病院消化器センター長。2008年癌研究会有明病院副院長を経て、2015年7月より現職。
がん研有明病院は、患者はもちろんですが、医師にとっても非常に環境のよい病院であると自負しています。それは、がんを治療するためのプロフェッショナルが揃っているからです。がん専門のプロフェッショナルによるチーム医療を引き続き推進していきたいと考えています。
例えば、大腸の外科では医療スタッフが6人、それをアシストするトレーニング中の医師が6~7人います。トレーニング中の医師といっても、初期研修段階の医師はほとんどいません。基礎的な知識と技術を修得した上で、がんに特化した医療スキルのさらなる向上を目指すいわゆる医師が集まっています。彼らのサポートにより、医療スタッフは、雑務に追われることなく手術に専念できるとともに、彼らをしっかり指導し、高度の技術を持った専門医にすることができています。
呼吸器センター、消化器センターといったセンター構造になっているのも、がん研有明病院の特徴的なところです。消化器センターでは、内科と外科がチームで医療を行っています。そして、肝・胆・膵と大腸、胃の各診療科のスタッフが連携して治療に当たります。とくに、大腸がんは肝転移が多いため、チーム医療が重要です。最近では、肝転移があっても、手術での切除や化学療法によって助かるケースも増えてきています。
また、胃がんであっても胃に関わる診療科だけが集まって診療を進めると、治療方針が間違っていた場合にでもこれを修正することが難しいことがあります。これに対して、胃だけでなく大腸、肝臓など複数の診療科が関わると、治療方針に対して様々な視点から意見を出し合うことができるため、ある意味で相互監視になり、透明性のある医療ができると考えています。