日本人の死因第1位は悪性新生物=がんである。そのなかでも、大腸がん死は男性の第3位、女性ではトップ。男性の33人に1人、女性の44人に1人が大腸がんで死亡する計算になる。

 ただし、大腸がんは早期発見で完治が期待できる数少ないがんだ。進行がんでも、5年生存率は8割近い。その生存率をさらに上げるには、どうやら診断前の生活がものをいうらしい。

 英インペリアル・カレッジの研究チームは欧州のがんと栄養に関する調査から10カ国、52万人超のデータを集め、解析を行った。参加者は病歴や食事・生活習慣を回答し、身長体重を計測している。追跡調査の6.4年の間に大腸がんと診断されたのは3292人。このうち872人が、大腸がんで死亡した。

 解析にあたっては、世界がん研究基金と米がん研究所が推奨する“がんを予防する生活習慣(食・栄養・身体活動)”に従って、参加者の生活を男性6点満点、女性7点満点で評価した。

 評価因子は「体重」「身体活動の程度」「体重を増やす飲食物の摂取量」「植物性の食べ物の摂取量」「肉類の摂取量」「アルコール摂取量」の六つ。女性はこれに「授乳経験」がプラスされる。良い生活習慣ほど点数が高いのは当然として、喫煙・禁煙の有無が評価項目にない点がポイント。

 解析の結果、男性では3点以上、女性では4点以上で有意に生存率が高まった。なかでも、「適正な体重」と「植物性の食べ物をたくさん食べていること」が、最も強く生存率の上昇と関連することが判明している。

 この調査の結果だけでは、診断前の習慣の「何」が直接、発症後の生存率に関係するかを特定するのは難しい。ただ、健康的な習慣──特に、野菜や果物をよく食べて適正体重を保つことで、喫煙リスクを抑えたことは興味深い。

 さて、現在40歳の日本人男性が、今後20年のうちに大腸がんと診断される確率は7%、今50歳なら20%だ。「がんを予防し、かつ万が一のときに生存率を上げる生活習慣」に切り替えるなら早いほうがいい。喫煙者は特に、だ。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)