国内鉄鋼各社と資源会社は原料炭価格(今年4~6月分)について、前年比55%増となる1トン当たり200ドルで合意した。豪州の集中豪雨の影響で300ドルに高騰した2008年度を除けば過去最高値となる。

 原料炭のみならず鉄鉱石も大幅値上げは不可避の状況であり、国内鉄鋼メーカーの原料コストは年間1兆円以上も増加することになりそうだ。10年3月期の高炉大手5社の営業損益合計が約1000億円(見込み)だから、その影響はいかにも甚大である。

 原料価格高騰の最大の要因は、中国需要の急増による需給の逼迫だ。昨年、中国の原料炭輸入は前年比5倍の3450万トンに拡大。世界の鉄鉱石輸入量9億トンのうち6億トン超を占めており、需給逼迫に拍車がかかっている。

 もう一つの要因は、資源会社の寡占化だ。日本における鉄鉱石のシェアは、英豪系のBHPビリトンとリオ・ティント、ブラジルのヴァーレの3社で約9割、高品質の原料炭ではBHPとリオ・ティントの2社で7割。さらにBHPとリオ・ティントは生産部門の統合を計画している。圧倒的なシェアを背景にした価格交渉力には歯が立たない。

 今回の原料炭価格決定に関しては、鉄鋼各社は四半期契約を突きつけられた。これまでは年間を通じた安定供給が困難になるとして年間契約で決めてきたが、ついに資源会社の要求をのまざるをえなくなった。

 今後、鉄鋼各社は、最大の需要家である自動車・エレクトロニクスメーカーに価格転嫁、および価格決定の四半期化を打診すると見られるが、はたしてすんなりといくかどうか。

 一方で、世界を見渡せば新興国の鉄鋼メーカーが急成長しており、国内大手の交渉力は明らかに低下している。国内シェアを統合審査基準とする独占禁止法の運用の是非を含めて、国内大手による共同購入や再編論議が再燃する可能性は大きい。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 松本裕樹)

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