今後の日銀金融政策の焦点は、国債買い入れオペの増額を行うか否かにあるだろう。「海外の主要中央銀行は大胆にやっている」という声も聞こえてくる。しかし、その代表例であるイングランド銀行(BOE)は、現在非常に悩ましい状況に陥っている。

 BOEは昨年3月から量的緩和策を開始し、英国債(ギルト債)を大規模に購入してきた。買い入れ額は1983億ポンドに達する。

 10年国債の利回りと10年物OISレート(今後10年間のポンド銀行間オーバーナイト金利の推移予想)のスプレッド(開き)を見てみよう。一般に、国債のリスクプレミアムが高まれば、このスプレッドは大きくなる。

 リーマンショック(2008年9月15日)から量的緩和策導入決定前日(09年3月4日)までのスプレッドは平均0.4%。それが、国債買い入れ策決定(09年3月5日)から11月上旬は、平均0.04%へ縮小した。当時は国債買い入れオペの効果が表れていた。

 ところが、その後、様相が変わり始めた。今年1月初から3月19日までのスプレッドは平均0.52%だ。国債買い入れ策の効果が見えなくなってしまった。

 この状況に直面したBOEは、国債買い入れ策を拡大するのではなく、追加購入を見送っている。同行の3月金融政策委員会議事要旨によると、国債を含むポンド建て資産のリスクプレミアムが上昇しているとの警戒が示されている。