だが筆者は、この計画に日本が積極的に参加すべきだと考える。理由の1つは、従来から指摘してきたように、極東地域についてロシアには弱みがあるからだ。ロシアは、中国の人海戦術的な進出による極東地域の実効支配を恐れており(前連載第18回)、極東開発への日本の参加を切に望んでいる。日本が明確な戦略を持って関与できれば、ロシアの狙いを過度に恐れることはないはずだからだ(第84回・4p)。

サハリン州郷土博物館の建物は、1937年創立の旧樺太庁博物館

 そして、サハリン州に4回訪問して、別の考えも持つようになった。それは、サハリン州が単純に「ロシア」ではないということだ。もちろん、ロシア人社会がメインなのだが、ユジノサハリンスク市街には日本統治時代(旧・豊原市)の名残が多く残っている。日本統治時代の歴史・遺産を保存している博物館があり、韓国のように日本統治時代を全否定するわけではなく、一定のリスペクトがあるようだ。歴史だけではなく、現在においても、約100年前の日本統治時代に敷設された水道設備をそのまま使用していたりする。「日本のインフラ整備は長持ちしていい」と、妙に評価が高いそうだ。日本とのビジネス関係も密接で、北海道などから多くの企業が来ており、街ではたくさんの日本人を見かけた。

 日本人だけではない。サハリン州には多くの韓国系住民がいる。日本統治時代に強制徴用で連れてこられた人の子孫もいれば、戦後に渡ってきた人もいる。サハリンには韓国系の社会があるのだ。そして、中国人もいる。サハリン州の実態とは、単純な「ロシア」ではなく、ロシア、韓国、中国、そして日本が混じった多民族・無国籍な社会なのである。

 あえて語弊を恐れず言えば、これからサハリン州(北方領土を含む)が、石油・天然ガス開発で劇的に発展するならば、日露中韓が皆入っていって「ウィン・ウィン」で儲けたらいいのではないか。北方領土が日本領かロシア領か、あるいはサハリン州全体がどこの国なのかわからないくらい、多国籍の人間が住み、ビジネスを展開して経済成長し、豊かな社会となるのであれば、何も問題ないはずだ。従って、サハリン州の「クリル諸島発展の共同プロジェクト」には、日本は躊躇なく関与すればいいのだと考える。