ちぐはぐなことが起きている。日本銀行と米金融規制当局が意図する方向性が真逆のため、結果として、日本の金融機関のドル資金借り入れコストが急騰する現象が発生している。それは日系企業にとっても、ドル資金借り入れコストの上昇につながるため注意が必要である。
日銀は量的質的金融緩和策によって国債などの利回りを大幅に低下させ、金融機関や機関投資家を深刻な資金運用難に追い込み、彼らにドルなどの外貨建て資産を持つよう促してきた。それによって生じる円安を日銀は期待してきた。
ただし、彼らはもともとドルをほとんど持っていない。顧客から預かっているのは円である。ドル建て資産を大規模に保有し続けるには、大量のドルを市場から借りてこなければならない。
しかしながら、米国では、2008年に起きたリーマン・ショックのような金融危機を二度と発生させないために、ドット・フランク法、ボルカー・ルール等々により、金融規制が徹底的に強化されてきた。国際決済銀行(BIS)もバーゼル3を中心とする多数の規制を導入しつつある。
そういった新規制に対応するため、月末になると多くの米国の金融機関や証券会社は、バランスシートが膨らまないように金融市場での取引を極端に控えるようになった。その結果、月末(特に四半期末)になると、日本の金融機関がドルを調達するコストは跳ね上がりやすくなっている。この9月末越えもそうなっている。
米国の新規制の中には、外国の銀行に対してドルを本国に送金する金額を制限させるものもある。米規制当局が、外国の金融機関にドルをあまり使わせたくないと考えているというのは、今や明らかだ。以前は、基軸通貨としてのドルの利用が国際金融市場で活発化することは米国にとって利益だと考えられていたのに、状況は様変わりした。