1970年代や80年代のころは「商社冬の時代」というフレーズが飛び交った。その後も時折、同じ言葉を見かけたが、2010年はどうなるのだろう。今回は「商社いまだ冬の時代」かどうかを検証する話をしていきたい。
各社とも「減収減益」だが
なんとか黒字を確保
商社といえば、三菱・三井という財閥を抜きにしては語れない。その成り立ちについては現在、NHK大河ドラマ『龍馬伝』で三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎が描かれていることからも伺い知れる。
各種のエピソードはドラマに譲り、早速、本題に入ることにしよう。今回は紹介する分析資料が多く、しかも「財閥」をヒントにユニークな展開を用意しているので、歴史街道を歩いて道草をしている余裕がないのである。
次の〔図表 1〕は総合商社4社の、前期(09年3月期)の実績と、当期(10年3月期)の予想を比較したものだ。
4社とも右端にある増減率の頭に▲印が付いて「減収減益」を余儀なくされている。ただし、10年3月期の当期純利益は、全社とも黒字を確保する見通しのようだ。
前回コラムでは鉄鋼業界を取り上げて、原料価格の上昇が企業にジレンマを与えていることを述べた。ところが、総合商社の場合は、原料価格の上昇がむしろ業績改善要因になるといわれる。来期(11年3月期)は各商社とも増益が期待されているというから、経済構造というのは複雑だ。
第26回コラム(トヨタ編)以降、当期純利益がマイナスであるために、ROE(自己資本利益率)やPER(株価収益率)の扱いに苦労してきた。総合商社を扱う今回は、安心して話を進められそうだ。
なお、〔図表 1〕では住友商事が省略されている。同社については次回のコラムで、国際会計基準(IFRS)に絡めた「マジカルIFRSツアー」を提供する予定でいる。今回は力を温存するという意味で、ご容赦いただくとしよう。
黒字基調でも伝統的PERは崩壊
「厳冬期」から抜け出すのはまだ先か
4社とも黒字基調であることに安心して、伝統的PER(株価収益率)を求めたのが〔図表 2〕である。