普通の人が
「自分の言葉」で話す集会に
広瀬 木内さんが司会を始められた頃と、現在とを比べて集会の変化を感じますか?
木内 参加者のみなさんが変わってきていると感じています。
最初は組織から動員されてきている人が多かったように思います。
高齢の方の割合も多く、自主的に参加しているわけではないので、なんだかつまらなそうな方もいたし、なかには寝ている人もいました。
そういう人たちをなんとか盛り上げようと思って、大きな声を出したり、ときにはちょっと黙ってみたり。
黙ると、「どうしたの? この人、言うことを忘れちゃったの?」と思ってこっちを見てくれます。
そんなふうに人の気持ちをつかもうという努力はしてきたつもりです。
広瀬 さすがに女優です。舞台をつとめる役者ですよ。
木内 そのうちに、登壇してくれる人たちに愛情が湧いてきたのです。
本当に日本の宝のような人たちだと思う。
ギャラはないし、交通費も自腹。だからこの人たちが話しやすい場をつくろうと一生懸命でした。そのうち、「いい司会でした」と何人もの方が言ってくださるようになり、大江健三郎さんが「ありがとう」と言ってくださったりと、うれしいことがあるのです。
でも、困難なこともありました。
2014年2月の都知事選で、舛添要一さんが圧勝したときです。
あの時期、私も相当いじめられました。「おまえが余計なことをするから票が割れた」と言われて、本当に辛い時期があったのです。
それで、二度とこんなことをやるものかと思ったりもしました。
広瀬 反原発派が、2つに割れてしまいましたからね。
木内 でも、その後の集会で、もう一度、参加者に本気でお願いしたんです。
「私たちは脱原発という同じ目的を持っている。労働組合だ、共産党だとこじれて仲違いしてしまったけれど、もう一回、元に戻りましょうよ」と。
「内輪の対立なんか、乗り越えていきましょう。本当の敵は、あっちです!」と国会議事堂を指差したのです。