1998年に経営破綻した日本長期信用銀行。エリート集団として高い評価を受けていた行員たちは、社会から糾弾され、辛酸をなめることとなった。経営破綻から17年、2000年に新生銀行として再出発してから15年。苦悩の日々を潜り抜け、自ら人生を切り開いた長銀OBの激動の十数年に迫る。(経済ジャーナリスト/宮内健)
社会人歴5年で退職
未経験の人材紹介会社を起業
「子どもの頃から周りには経営者がたくさんいました。親戚や友人の家庭も会社経営をしているところが多かったんです。そんな環境で育ったので、自分でリスクを取って物事を決断し、自分で人生を切り拓いているように見える経営者にずっと憧れていました」
金融業界やコンサルティング業界を中心にプロフェッショナル人材の紹介事業を手掛けるコトラの創業経営者、大西利佳子さんは会社経営に興味を持ったきっかけについてそう語った。
大西さんは1997年に慶応大学を卒業して長銀に入行し、事業法人担当や営業企画業務に従事した後、2002年に起業して人材紹介事業コトラをスタートさせた。人材紹介会社で働いたこともなければ人事部経験もないまま社会人歴5年、20代半ばの若さでいきなり未経験の事業を立ち上げたのである。
それから13年。現在コトラの従業員数は約30名となり、最近は仕事の価値観をはかるアセスメント事業や戦略的採用コンサルティング事業、プロジェクト型紹介事業などの新規事業にも注力している。
早い時期から経営に興味を持っていたとはいえ、未経験の業種で起業するのはかなり思い切った決断ではなかっただろうか。
「プロフェッショナルがより生産性高くビジネスを進めていくことが企業の成長に大きく寄与するので、それを実現するビジネスを始めたいと思ったんです。まったくの素人からスタートしたのは、どこかの人材紹介会社に転職してノウハウやお客様とのコネクションを得てから独立するのは、勤務先への不義理にあたると考えたからです」
プロフェッショナルの生産性が重要との考えは、長銀が国有化され、その後新生銀行へと変わっていく組織のなかで直面した大西さん自身の体験が根底にある。その体験はどのようなもので、徒手空拳の若い女性がどのように事業を立ち上げ、現在に至ったのか。