「史上最速」の会社に学ぶ、速さの秘密。今回は、速さを実現するために当社でつくっている「仕組み」をご紹介します。
打ち合わせでの「持ち帰り」を極力なくす
仕事を遅くしている要因のひとつに、会議や打ち合わせでの「持ち帰り」があります。
「とりあえず社に持ち帰って検討します」というプロセスが、大きく仕事を減速させるのです。
うちのデザイナーは、クライアントが考えているイメージを打ち合わせの場ですぐに絵にして見せるようにしています。
たとえばクライアントから「ライバルのA社のああいう製品があるんだけど、あれよりも薄くて軽くてコンパクトなものがほしいんです」とリクエストがあったとします。そういうときは、その場でサーッとスケッチを描いてしまいます。つまり平面上の「たたき台」をつくるのです。
「こんな感じですか?」「いや、違うなあ……」「じゃあ、これですか?」「あっ、そうそう、そんな感じ」といった具合に、何度か描き直しながら進める。だいたいの方向が見えたら、さらにその場で絵を描き込んでいく。
すると、打ち合わせの1、2時間のあいだで、輪郭がはっきりと見えてきます。私たちは「オンサイト・スケッチ」と呼んでいます。その絵を会社に持ち帰って、すぐに実際のイメージをCGで描いていくのです。
打ち合わせという機会は、とても貴重な機会です。仕事相手と面と向かって長いあいだ話せるわけですから。また、打ち合わせを一回行うと、移動時間も含めて何時間もかかる場合もあります。それだけの時間がかかった分だけ、仕事はちゃんと進んだのか、その「仕事の飛距離」を意識しないといけません。
よって、打ち合わせの場でクライアントの話を聞き、「それじゃあ次回の打ち合わせまでにデザインを検討しておきます」では、時間は短縮できませんし、時間がもったいないでしょう。
その場でやれることはすべてやるのが、速さを追求するためのコツなのです。
未来の自分が動きやすいようできるだけ準備する
打ち合わせの場ですぐにデザインできるのは「事前に準備しているから」でもあります。
私は、あらかじめできるところまで準備しておくことを「あらかじめ戦略」と呼んでいます。当社では、この「あらかじめ戦略」を徹底しています。
たとえば、クライアントがリモコンの試作を望んでいるとします。それがテレビのリモコンか、ゲーム機のリモコンかによってもデザインは大きく異なりますし、使うのが高齢者か子どもかによっても違ってくるでしょう。ボタンが多めのほうがいいのか、最低限に抑えたいのかによっても変わります。
しかし、「リモコンの試作」と決まった時点でできることはたくさんあります。どんなリモコンであれ、ベースとなるカタチはほぼ決まっているからです。かならず電池が入る場所がいるし、そのカバーのフックが入るところもいる。赤外線が出るところも必要でしょう。また、持ちやすくするためのラウンド形状も、たとえば「R5」などといった数字で決まっているのです。
クライアントの要望や過去の実績、材料や資料など、すべてをそろえてから、ああでもない、こうでもないと検討していては、時間がいくらあっても足りません。どれだけ先が読めるかによって、仕事全体の速さは決まってきます。
できるところまで準備しておく。「未来の自分」ができるだけ手をつけやすいように、整えておくことが大切なのです。
「最速の会社」の秘密はいかがだったでしょうか? あなたの仕事やチームの仕事をスピードアップさせるヒントにしてください。