「史上最速」の会社に学ぶ、速さの秘密。
今回のテーマは「コミュニケーション」です。
速い仕事には円滑なコミュニケーションが不可欠。かといって、改まったランチ会やヒアリング会は意味がないといいます。では、どうすればいいのでしょうか?
「わからなかったら聞いて」という危険ワード
あらゆるトラブルはコミュニケーション不足から生まれます。
社外であれ社内であれ、きちんとコミュニケーションを密にとっていれば、トラブルは起きません。見ていると「なんでやっておかなかったんだ!」「私はこう言ったじゃないか!」など、トラブルの起きている場所では、たいていコミュニケーションが不足しているのです。
クライアントや取引先とのコミュニケーションは、丁寧に細かく行うことです。
コミュニケーションを丁寧に行うと時間がかかるように思えますが、逆です。コミュニケーションが円滑になればなるほど、意思決定も速くなり、仕事は加速するのです。
速さを実現するコミュニケーションのコツは、とにかく「具体的に」「数字で」やりとりすることです。「何を」「どのように」「どこまで」「いつまでに」やるべきなのか。それすら伝えられないのに、いい仕事が上がってくるはずがないのです。
具体的に指導する時間がなかなかとれなくて、「わからないことがあったら聞いて」と言って、仕事を任せる人もいると思います。
この「わからなかったら聞いて」は危険なセリフです。なぜなら、なかなか自分から聞ける人はいませんし、相手が勝手に「わかっているつもり」になっている場合もあるからです。すると、まったく見当違いの方向で進められてしまう可能性もあります。それが判明してからやり直すようでは、時間をおおいにムダ遣いしてしまいます。
最初に丁寧に仕事を説明したほうが、結果的に仕事がスムーズに進むはずです。どこにどれだけ時間をかけるかの見極めは重要です。コミュニケーションはついおろそかにしがちですが、そこに時間をかけたほうがムダをなくせるのです。
改まったランチ会より普段の「声がけ」
私は「コミュニケーションは質より量が大切だ」と考えています。
社内であれ、社外であれ、質の高いコミュニケーションを1度行うよりも、質が低くてもたくさんコミュニケーションをとったほうが仕事はうまくいきます。
よく、「社内コミュニケーションが大切だ」ということで、形式ばった「面談の日」をつくる会社があります。もしくは「ランチ会」などを企画して、部署間のコミュニケーションを円滑にしようという試みも見られます。
しかし、そういった「質が高そうだけれど頻度の低いコミュニケーション」はあまり意味がありません。
それよりも、質が低くてもいいから大量にコミュニケーションをとることです。
私は現場に行ったときに、社員の背中をポンと叩いて、「最近、楽しそうやなあ」「調子どうや」などと声をかけるようにしています。「それ、どこのクライアントの製品?」と聞いたり、階段ですれ違うときに「どうした、しんどそうやな」と一言かけるときもあります。会話が続かなくてもいいので、どんどん声をかけていくのです。
コミュニケーションの量が増えていくと、それに比例して仕事も円滑に速く進むようになっていきます。
相手が苦手なタイプでなかなかコミュニケーションを取りたくない、ということもあるかもしれません。
以前、経営者の先輩に「馬には乗ってみよ、人には添ってみよ」ということわざを教わりました。
「馬のよしあしは乗ってみなければわからず、人柄のよしあしはつきあってみなければわからない。何事も自分で直接経験してみよ」という意味です。本当にその通りで、人も食わず嫌いはいけないのだと思います。
仕事である限り、どんな人とでもつきあうのは義務のようなものでしょう。
しかし、人間は不思議なもので、会話の量を増やしていくと、生理的に受け入れられないと思っていた相手でも、それなりに付き合えるようになるものです。どんなに嫌だと思っていた相手でも、話しているうちに「この人、いいところもあるんだな」とだんだん警戒心が緩んでいきます。
「仕事が円滑に進まないなあ」と思ったら、仕事相手とのコミュニケーションが足りているか振り返ってみることをおすすめします。
任せるときは「人選」が9割
スピードを上げるには任せることは重要です。任せ方については、「どうやって任せればいいのか」ということがしばしば議論になりますが、私は「どう任せるか」よりも「誰に任せるか」のほうが10倍大切だと思います。
どんな任せ方をしても、できる人はできるし、できない人はできない。つまり、どれだけその人に合った仕事を任せることができたかがカギなのです。
その作業が得意な人を見つける。任せ仕事を成功させるためには「人選が9割」と言っても過言ではありません。
ものづくりの現場では、製品をつくる技術はプロフェッショナルだけれども、管理職になったとたんに急速にしぼんでしまう人は珍しくありません。技術的にはピカイチで、速いし納期を守るのですが、人を管理するのは苦手という、まさに職人気質のタイプです。その逆に、ものづくりの技術的にはそこそこでも、管理職になったとたんに実力を発揮しはじめる社員もいます。
それぞれのメンバーの強みを見つけることは、リーダーの大切な仕事です。適材適所を心がけないと、本人のためにもまわりのためにもなりません。
任せるときに大切にしているのが、苦手なことを克服させようとしないことです。リーダーによっては「彼はコミュニケーションが弱いから、あえて営業をさせよう」などといった判断をするかもしれません。それもひとつの育て方かもしれませんが、苦手なものや弱点をなんとかしようと思っても、結局マイナスをゼロにすることにしかならないのです。
ドラッカーの『経営者の条件』には「問題の解決よりも、機会を成果に変えることのほうが、はるかに生産的である」という言葉が出てきます。弱い部分をリカバリーしようとするのではなく、成功しそうなチャンスを成果に変えよ、ということでしょう。リーダーが人選をする場面でも、このことを意識しておくことは大切なのです。
「最速の会社」の秘密を今後どんどん公開していきます。あなたの仕事やチームの仕事をスピードアップさせるヒントにしてください。
(続きは明日、更新します)