

アメリカではこうはいきません。ABCやCBSのような大手のテレビ局はありますが、全米レベルで視聴率が2ケタに届くような番組は、ほぼないといってよいでしょう。ケーブルテレビの普及で視聴者数自体は多いものの、それが数百のチャンネルに分散してしまい、日本のように多くの視聴者に一斉に情報伝達できることなどありえないのです。
それに加えて、ここ数年「HuLu」や「Netflix」などオンライン系の新しい映像コンテンツ配信メディアが急速に普及し、テレビ局に大きな変革が起きているのが現状です。ヨーロッパにおいても、アメリカとは違った背景で衛星放送の多チャンネル化が進んでいて、日本のキー局のようなモンスターメディアは存在しません。
世界的に見ると、非常に強い力を持つモンスターメディアであるテレビ局と、大手広告会社がその広告枠を独占的に販売するという日本の広告業界の構造は、かなりレアなケースだといえます。
1業種に1社しかクライアントを持たないことが大原則である他の国の広告会社は、クライアントの秘密情報までも共有し、マーケティング分野の経営課題を解決するための運命共同体として、そこから得るコンサルティングフィーを収益の柱にしています。メディアの広告枠販売手数料は、コンサルティングフィーほど大きくありません。
このように、テレビCMさえも圧倒的なマスにリーチするものではなく、広告会社もクライアントに個別のメディア戦略を提供する文化があったからこそ、欧米では早くからネット広告が普及してきたともいえるでしょう。
かたや、ネット広告がなかなか普及しない日本では、理由はいくつかあるにせよ、他国に類を見ないほどの地上波による圧倒的な情報伝達力の影響は、決して無視できません。
ネット広告の成長が著しいとはいえ、諸外国に比べてまだまだ広告費の内訳でテレビCMの占める比率が大きいというのが、日本の広告業界の実情です。